研究課題
本年度までの成果の一つ目として、4H-SiC基板を熱酸化して30nm程度のSiO2膜を成長し、さらにその上に4~5nm程度の極薄金薄膜を透明ゲート電極として形成し、MOSキャパシタを作製した。その試料に対し、暗状態および紫外光(低圧水銀ランプ)照射後の容量-電圧特性を測定した。その結果、紫外光への応答を証する少数キャリア蓄積による反転層形成を確認した。また、容量の時間変化を測定し、光パルス照射に対する過渡応答特性を測定した。結果から、SiC基板上のMOSキャパシタの応答速度は十分速く(数ミリ秒程度)、また、電荷消滅時間もコンマ数秒と十分長かったため、SiC MOSキャパシタはCCDへの応用に対し問題のないことを確認した。二つ目の成果として、4H-SiCよりバンドギャップの小さい3C-SiC基板を用い、可視光に対する光応答を検証した。その結果、4H-SiC MOSキャパシタでは応答を示さなかったハロゲンランプに対しても反転層形成を確認し、可視光への応答を実証した。なお、3C-SiCエピタキシャル膜はSi基板上に成長されたものが市販されており、今回もそれを用いているが、Si基板からの光応答ではないことを確認している。現在継続中の課題として、電荷輸送に対する原理検証を行っている。具体的には、1×3ピクセルのCCDを複数形成できるフォトマスクを作製し、リソグラフィー装置を用いて簡易型CCDを作製している最中である。現在、酸化膜形成およびリソパターン形成を完了し、pn接合を形成するための高温イオン注入処理を外部機関に依頼しているところである。
3: やや遅れている
申請書の研究計画によれば、本年度までに「光応答」、「電荷輸送」、「可視光応答」の3項目について完了していなければならない。しかし、電荷輸送については試作素子が未完成である。しかし、すでにフォトマスクの作製、リソグラフィーの準備等は終わっており、イオン注入の依頼先は確保している。従い、計画の遅れは今後取り戻せると思われる。
今後は、まずは昨年度にやり残した電荷輸送の検証を完了させる。続いて、CCDの高感度化を目指して素子改良を行う。その一つ目の方策として、p型層を埋め込みチャンネルとしてMOS界面に形成し、キャリアをMOS界面から引き離すことで電荷消失を抑制する。また、3C-SiC/Siヘテロエピ基板を用い、背面のSi基板を深掘りエッチングし、背面入射型CCDの作製を試みる。以上のプロセスを用いない試料と用いる試料とを作製し、プロセス有無の比較によって感度向上の効果を検証する。
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