研究課題
本年度に得られた研究成果は、主に炭化ケイ素 (SiC) 半導体基板上に作製したMOSキャパシタアレーに対する電荷輸送に関する原理検証である。具体的には、1×3ピクセルのCCDを複数形成できるフォトマスクを作製し、フォトリソグラフィー装置を用いて簡易型CCDを作製した。その試作素子に対し光照射を行い、生成された電荷を3つのMOSキャパシタ間で電圧切り替えによって受け渡しを試み、電荷輸送を検証した。ここで、面内方向の空乏層の伸長を助長させるため、電圧は二つの端子間で印加した。また、波長365nmの半導体レーザを光源として用い、最端ピクセルのやや外側に連続的に照射し続けた。その結果、電圧のon-offに応じたMOSキャパシタ間の電荷の受け渡しが確認できた。また、光照射のon-offに対する応答速度に比べ、電荷の輸送速度は十分速いことが確認できた。従い、前年度に得られた光応答特性に関する研究成果も踏まえると、SiC半導体はCCDの基板材料として有効であることが実証された。
3: やや遅れている
申請書の研究計画によれば、本年度までに「電荷輸送」、「高感度化(埋め込みチャネル構造)」、「高感度化(背面入射型)」の3項目について完了していなければならない。前項の通り「電荷輸送」についての検証は完了したが、「埋め込みチャネル構造」や「背面入射型」については試作素子が未完成である。しかし、「埋め込みチャネル構造」については近年の技術革新により、より簡便な作製プロセスが開発され、本研究でもそれを採用することでよりスピーディーに開発を進められるようになったため、これまでの遅れを取り戻せると考えられる。一方、背面入射型についてだが、本方式は素子単体では暗電流が大きく冷却が不可欠であるが、高温高放射場利用という研究目的に鑑みると適さない方式であると言える。従い、背面入射型に対する検証は取り止め、次項で述べる「放射線耐性評価」に力点を置き、軌道修正することでより効率的に研究を進めることにした。
「埋め込みチャネル構造」埋め込みチャネル構造を導入することで、キャリアの輸送経路をMOS界面から引き離し、MOS界面欠陥でのキャリア捕獲を回避し、光応答特性の高効率化を図る。当初の計画ではn型基板にp型層をイオン注入により形成した後、ごくMOS界面近傍の極薄層のみ再度n型イオン注入層を形成するというプロセスを検討していた。しかし、p型層を箱形プロファイルでなくガウシアン形状にすることにより、2回のイオン注入プロセスを1度に済ますことができる。以上で述べた埋め込みチャネル構造を有する試料とない試料とで比較検討を行い、本手法による感度向上の効果を検証する。「放射線耐性評価」最終年度である本年度において、主に最終形SiC-CCD の複合耐極限環境性の評価を行う。ガラス窓をCCD 受光部に配置した高温炉を作製し、ガンマ線源等を本素子で撮影しながら室温から150℃までの高温・ガンマ線照射を行う。照射中、CCD 特性(光応答特性等)の変化の様子をリアルタイムでモニタリングし、さらに、温度に対する影響を明らかにすることで、これまでにMOS単体の照射試験で培ってきた知見を活用しCCD レベルでの素子劣化機構の解明と強化技術の開発を図る。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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