研究課題
本研究では、金属細線でのエレクトロマイグレーション現象を利用し、金属原子を室温で一つずつ移動させることが可能な、新しい原子移動操作技術の開発を行う。具体的には、原子スケールの接点構造である「原子接合」や、原子スケールのギャップ構造「原子ギャップ」を作製する。これらの技術を応用し、原子1個~数個分の島電極を有する単電子トランジスタである「“単原子”トランジスタ」の実現を目指す。技術的には、金属細線でのエレクトロマイグレーションの発現強度を、印加電圧のその場フィードバック制御により調整する。本研究では、Field-Programmable Gate Array(FPGA)を用いたカスタムハードウェアを独自に構築し、原子を高速に移動制御する技術を開発する。これより、“エレクトロマイグレーション”という簡単な手法にて原子スケールデバイス技法の開拓を行い、単原子機能の発現・制御手法の確立を目指す。初年度(平成27年度)では、FPGAを利用したエレクトロマイグレーション計測制御専用ハードウェアシステムを構築した。本システムは、Host-PC、再構成可能なFPGA、計測対象(金属ナノ細線)から構成され、”電圧フィードバック制御型エレクトロマイグレーション法”のアルゴリズムがハードウェア(FPGA)に実装された形で実行される。これより、汎用プロセッサによるソフトウェア環境に比べ、計測・制御・処理の大幅な高速化が可能となる。今回構築したシステムでは、計測制御時にソフトウェア処理を介さず、計測対象であるAuナノワイヤ試料とFPGA間で制御が行われる。これより、制御ステップ時間としてはマイクロ秒程度での高速なエレクトロマイグレーションの実行を確認し、さらに、プロセス全体の終了時間を1秒以内で完了させることに成功した。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題では、通電処理という至極簡単な手法のみで、FPGAを用いたエレクトロマイグレーションにより駆動された原子の高速な移動制御が可能であることが明らかとなった。これは、従来のGPIBと汎用オペレーティングシステム(GPOS)を用いたソフトウェア環境によるエレクトロマイグレーション制御の1000-10000倍の高速性能を示している。
第2年度(平成28年度)では、これまでに開発してきたFPGAを用いた専用ハードウェアによる超高速エレクトロマイグレーション計測制御技法を用いて、電圧フィードバック制御型エレクトロマイグレーション法による原子接合や原子ギャップなどの原子スケール構造体の高速な作製技術の開発を行う。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
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