研究課題
本研究では、研究項目を「超高純度結晶成長」と「ppbレベルでのドナー/アクセプタドーピング」の2つに分けて実施している。前者については、H28年度は、昨年度に残留不純物として観測されたSiのダイヤモンド中への混入を抑制するための装置改良を行った。Si源としてはマイクロ波導入のための石英窓が主たる要因と考えられる。プラズマキャビティを設計変更することで、プラズマと石英窓の距離を離した。その結果は、昨年度は観測されていた、濃度がppb以下のSiVセンタが、今年度は観測されなくなり、有効にSi混入を抑制できたことが分かった。SiVは負に帯電しやすいため、NVセンタの電子スピンの負電荷を捕獲し、NVセンタの電子スピンを不安定化させる。今回の装置改良は、NVセンタの電荷安定性向上に有効であるといえる。後者については、H28年度は、天然存在比で0.36%の15Nを用いて、CVD中に微量ドーピングによる単一NVセンタの形成を行った。窒素ガスの水素希釈は1%であり、他の原料ガスとともに供給すると単一欠陥ではなくアンサンブルとして形成されてしまう。そこで取り込み率を抑える工夫を施したガス配管を施すことで単一欠陥の作製を試みた。その結果、このガス配管形態では、ドーピングの制御性に制限が多いことが分かった。ホウ素濃度についても評価を実施した。その結果、高純度結晶中のホウ素濃度は蛍光評価の測定限界(1015cm-3)以下であった。また、ホウ素をドーピングすることで1015cm-3台のドーピング制御が可能であることが分かった。
2: おおむね順調に進展している
超高純度化に関しては、残留不純物の高感度評価が不可欠。昨年度までの装置改良と成長条件最適化により、残留不純物量は一般的な二次質量分析法や感度に優れた分光蛍光評価では、全て検出限界以下となるレベルまで高純度化されていることが分かった。更なる窒素濃度の超高感度(濃度がppb以下)評価法としては、単結晶ダイヤモンド厚膜結晶を作製し、ESRにより格子置換位置の窒素を直接測定することが挙げられる。窒素の極微量ドーピングに関しては、本年度はガス配管に工夫を施すことでの実施を試みたが、この方法ではドーピングの制御性に問題があることが分かった。本年度の結果とH27年度に実施した結果を踏まえると、精度良く窒素ドーピングを行うためには、メタンガス中に窒素がppm程度に混入した原料を準備することが不可欠であるとい結論に至った。次年度は、この方法による窒素極微量ドーピングを試みる。ホウ素に関しては、これまでの成果から、バックグラウンドが十分に低いこと、また極微量でドーピング制御できることが分かった。リンドーピングに関しても、実施を開始した。以上のように、研究調書に記載した予定に沿って研究を遂行しており、おおむね順調といえる。
H27年度にホワイトキャンバスとしてのダイヤモンド結晶の成長に目途がつき、H28年度ではNVセンタの電荷不安定性を誘発するアクセプタ(主にはSiVセンタとホウ素)を十分(ppb以下)に抑制することに成功した。次年度は、NVセンタの高精度極微量ドーピング制御、残留ホウ素濃度の評価と高精度極微量ドーピング制御、リン極微量ドーピングを実施する予定である。これらの技術を融合させることで、電荷安定性が良好なカラーセンタの形成、ひいてはスピンマニピュレーション特性に優れた電子スピンの形成を目指す。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 4件、 査読あり 6件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 5件、 招待講演 3件)
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