研究課題/領域番号 |
15H03983
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
佐野 伸行 筑波大学, 数理物質系, 教授 (90282334)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 先端機能デバイス / 電子デバイス・機器 / マイクロ・ナノデバイス / デバイスシミュレーション / 半導体物性 / クーロン相互作用 / モンテカルロ法 / 低次元系 |
研究実績の概要 |
単原子層等の低次元チャネル構造を有する半導体FETデバイスの現実的なデバイス特性予測のために、クーロン相互作用を高精度に導入したモンテカルロ・デバイス・シミュレータの構築を行った。今年度は、以下のような成果を得た。 (1) Siを対象としたこれまでのモンテカルロ・シミュレータの物性パラメータを、将来デバイスのチャネル材料として有望視されているMoS2単原子層に対応できるように変更、それに伴ったプログラム修正を行った。高エネルギーにあるvalleyまでのバンド構造を含めることで、ホットフォノン等に伴った高電界効果に対応できるように配慮した。 (2) (1)と並行して、クーロン相互作用を正確に考慮した当該グループのモンテカルロ・シミュレータを単原子層等の低次元チャネル構造が扱えるように拡張した。 (i) 室温動作で重要なエネルギー散逸機構(無極性および有極 性フォノン散乱、不純物散乱、短距離電子間散乱)をモンテカルロ法に正確に導入し、ポアソン方程式と結合して自己無撞着計算が安定してできるようにした。(ii) シミュレータにマルチゲートFET構造を導入して、低次元チャネル構造に対応できるようにした。その際、低次元チャネル構造に加えて、ゲート、ソ ースおよびドレイン領域まで含めたデバイス全体をシミュレーション領域とした。(iii) ソース およびドレイン高濃度領域の電子とチャネル電子とのクーロン相互作用が、プラズモン励起や誘電ミスマッチに伴った影響を動的にデバイス特性に影響することを見出した。例えば、電流ノイズが自己無撞着な電子間相互作用によって大幅に抑制されることを見出した。 換言すれば、電子間相互作用を高精度に導入しなければ、正確な電流ノイズの予測が不可能であることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた研究補助者の雇用ができなかったために、シミュレータのプログラミングが当初の予定よりも遅れたために繰り越し申請を行った。その後、繰り越し年度にプログラミング能力の高い博士課程学生の協力を得て、安定動作するシミュレータのプログラミングを繰り越し申請の予定通りに完成させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
低次元チャネル構造を有する半導体FETデバイスの現実的なデバイス特性予測を物理的観点から行うとともに、低次元チャネル構造のもとでの局在化した乱れ(離散不純物等)に伴ったデバイス特性ばらつきを評価するための物理モデル化を行う。具体的には、以下のように計画している。 (1) 電流ノイズと電子間相互作用の関係をより詳細に検討する。具体的には、高濃度領域に生じる鏡像効果によってチャネル電子に作用する鏡像力の定量的な評価、鏡像力の高濃度ソース領域での電子濃度依存性、などを明らかにする。また、電子間相互作用のない場合での電流ノイズとの定量的な比較を行うことで、電子間相互作用の重要性を定量的に明らかにする。 (2) 低次元チャネル構造に離散不純物をあからさまに導入することで、低次元チャネル構造のもとでのデバイス特性ばらつきのためのモデル化を行う。なお、バルクにおける離散不純物の取り扱いについては、当該グループの提案している離散不純物モデルが世界的にも広く認知されている。しかしながら、低次元構造での適切なモデルは存在しない。 (i) これまでの知見を生かして、低次元構造に対する離散不純物のドリフト拡散シミュレータに適用可能なモデル化を行う。(ii) 構築した不純物モデルの正当性を当該モンテカルロ・デバイス・シミュレータを用いて移動度等の物性パラメータを評価することで検証する。(iii) 離散不純物モデルをドリフト拡散シミュレータに導入して、デバイス特性ばらつきの予備的な評価を実行する。低次元チャネル構造での局在した乱れ(離散不純物)によるデバイス特性ばらつきの予測が可能であることを示す。
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