研究課題
本研究は「ＭＥＭＳ可変共振子アレイによるテラヘルツ光空間変調デバイス」と題し、微小電気機械システム技術を用いてテラヘルツ光向けの可変透過光学フィルタの設計・製作・評価を実施するものである。周波数１００ＧＨｚから１０ＴＨｚのテラヘルツ周波数帯では、物質の分子構造によって吸収スペクトルが敏感に変化するため、特定波長の透過率から材料組成の推測が可能である。ただし、同技術の普及には、テラヘルツ光学系の小型化・高機能化が必要であることから、本研究ではテラヘルツ光を空間走査する透過型の変調器をＭＥＭＳ技術で実現する研究に取り組む。平成２７年度からの繰越分による研究では、金属系材料の表面マイクロマシニングにより石英基板上に静電駆動型のＭＥＭＳ－ＳＲＲ構造（Micro Electro Mechanical Systems-Split Ring Resonator）を製作し、そのＬＣ共振特性を電気機械的に制御することで、特定周波数のテラヘルツ光に対するＯＮ／ＯＦＦ透過フィルタとして利用する方法を理論的、実験的に検討した。また、このＭＥＭＳ－ＳＲＲをアレイ状に集積化することで、フレネルゾーンプレートや回折格子等の可変空間パターンを形成し、テラヘルツ光に対する空間フィルタとして機能することを、電磁界解析によるシミュレーションにより検証した。
1: 当初の計画以上に進展している
理由１として、平成２７、２８年度に実施予定であった当初計画の（１）製造誤差を含めたＭＥＭＳ―ＳＲＲの体系的な設計手法の構築と、（２）高歩留まりのＭＥＭＳ－ＳＲＲの製作技術の確立以外にも、ＴＨｚ光の完全吸収体をＭＥＭＳで実現可能であることを理論的に示し、かつ、その製作を行っているため。また、理由２として、ＭＥＭＳ型テラヘルツ光フィルタの応用先として、テラヘルツ光カメラを疑似カラー化するバンドパスフィルタに関する国際共同研究をフィンランドＶＴＴ技術研究所と開始したため。
実施計画書に予定の内容である、（３）テラヘルツ光走査のためのＭＥＭＳ－ＳＲＲ駆動パターン設計と、（４）ＭＥＭＳ－ＳＲＲアレイによるテラヘルツ光スキャン特性の評価を実施する。特に（３）に関しては、ＭＥＭＳ－ＳＲＲ構造内に静電駆動型の微小カンチレバーを配置し、その接点開閉動作によってテラヘルツ光の吸収周波数特性を可変にする新たな素子を実現可能であることが、これまでの研究によって理論的に明らかになったことから、本研究独自のデバイスとして、新たな検討項目として実施する。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)
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