研究実績の概要 |
(1)高キュリー温度強磁性半導体(Ga,Fe)Sbの実現:p型強磁性半導体(Ga,Fe)Sbの高キュリー温度化に向けて、結晶成長の工夫を行った。薄膜化などの結晶成長を工夫することによって、Fe濃度を25%まで高めて、世界で初めて室温を超えたキュリー温度 340 Kを実現した。 (2) 高キュリー温度強磁性半導体(In,Fe)Asの実現:n型強磁性半導体(In,Fe)Asのキュリー温度の改善に取り組んだ。高いキュリー温度を得るために、オフ半導体基板の上に(In,Fe)Asの結晶成長を行った。その結果、オフ角の増加につれてヒステリシスループの拡大が観測された。一方、MCDスペクトルのピークは、5 Kと300 Kいずれにおいても従来報告されてきた(In,Fe)Asのピークと一致しており、観測した室温強磁性は真性である可能性が高いことを示唆している。 (3)スピンダイオードの作製とと超巨大磁気抵抗効果の観測:p型に(Ga,Fe)Sbを、n型に(In,Fe)Asを用いた、共に強磁性半導体であるpn接合の構造をもつスピンダイオードを作成し、そのスピン依存伝導特性の評価を行った。その結果、20%程度の負の磁気抵抗効果と、500%を超える超巨大な磁気抵抗効果が得られた。20%程度の磁気抵抗効果は単純なスピンバルブ効果で説明できた。それに対して、500%を超える超巨大な磁気抵抗効果は、+8kGから-8kGまでの外部磁場の変化に対し2つの鋭いピークをもつ新現象であった。 (4)スピン電界効果トランジスタ構造の作製と波動関数制御による強磁性変調:波動性の強い(In,Fe)As量子井戸を含む電界効果トランジスタ構造を作製し、世界で初めて波動関数制御による強磁性変調に成功した。本実証によって、従来に磁性変調に必要とする面キャリア密度の変調量を2桁と大幅に削減し、超高速と超低消費電力の磁化スイッチング技術に応用できると期待している。
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