研究実績の概要 |
(1) (In,Fe)As/p-InAs江崎ダイオード構造において、磁気コンダクタンスのバイアス依存性を評価した。その結果、バイアスが小さい時(トンネル伝導が支配的な領域)、通常の正の磁気コンダクタンス効果に対して、バイアスが大きい時(拡散伝導が支配的な領域)、負の磁気コンダクタンス効果が見られた。この現象は(In,Fe)Asのバンドギャップ中にあるFeの不純物バンドの電子がp-InAsの伝導帯側に拡散するモデルで説明が出来ることを示した。以上の研究成果により、(In,Fe)As強磁性半導体のスピン状態とバンド構造を解明できただけでなく、バイアス電圧によって、(In,Fe)Asの伝導帯あるいは不純物バンド帯からのスピン注入を選択できることを示した。 (2) (In,Fe)Sbの電界効果トランジスタ構造を作製し、電界効果による強磁性の変調を行った。その結果、非常に小さい電子濃度の変化(Δn~2.2×10^17 cm^-3)だけで、キュリー温度が209 K -> 216 Kと約7Kの変調に成功した。また、従来のMn系強磁性半導体のキュリー温度変調実験が数十Kと低温でしか出来なかったに対して、本研究の強磁性変調が200 K以上と高い温度領域で達成できた。しかし、キュリー温度の変調量が従来の平均場Zenerモデルだけでは説明できないことも分かった。本研究成果により、(In,Fe)Sbが高キュリー温度の真性な強磁性半導体であり、その強磁性発現機構が伝導電子に依存する電子誘起強磁性の機構だけでなく、別の機構も存在することが分かった。 (3) (In,Fe)As/(Ga,Fe)Sb強磁性p-n接合を用いたスピンバイポーラトランジスタ構造のトランジスタ動作の改善を行った。非磁性のp-n-p構造を追加することによって、ベース電圧によるコレクタ電流の変更が実現できた。
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