研究課題/領域番号 |
15H03989
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
香川 景一郎 静岡大学, 電子工学研究所, 准教授 (30335484)
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研究分担者 |
沖原 伸一朗 光産業創成大学院大学, その他の研究科, 講師 (50410535)
宮崎 大介 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (60264800)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | イメージセンサ / 超高速カメラ / 距離画像計測 / 光飛行時間 / 光加工 |
研究実績の概要 |
昨年度設計・試作した超高速CMOSイメージセンサを駆動するための電子基板とソフトウェアを作成し,動作確認を行った.最大8アパーチャ×4タップを最長256ビットのシャッタパターンで駆動するためのメモリを内蔵したタイミングジェネレータの動作確認を行い,外部から与えたスタートトリガ信号により画素制御信号を生成し,所定の回数繰り返して停止することを確認した.しかし,ドーピング濃度が想定したものと異なったことから,画素における電荷転送が正しく行われず,撮像は確認できなかった.画像復元ソフトウェアとして,複数の超高速動画のデータセットを用い,時間分解画像の復元精度の良いシャッタパターンを選択するコードを開発した.光飛行時間に基づく距離画像計測の原理確認実験として,ファンクションジェネレータにより周波数5MHzで強度変調したレーザー光を測定対象に照射し,提案手法に基づく高機能イメージセンサを用いて画像を取得して距離計測を行った.これにより,フレームレートの10,000倍以上の周波数を持つ光信号の位相を検出し,測定可能距離の数パーセントの計測精度で距離計測が可能であることを示している.さらに,10 MHzで変調が可能なLED光源により測定対象を照明し,マルチアパーチャ撮像システムを用いた圧縮センシング原理による時間分解画像の取得を行い,約6nsの時間分解画像を得ることができた.光加工(ナノ秒短パルスレーザーによる加工)において発生するプラズマ発光と被加工材料の時間形状変化を連続したシングルショット撮像を行うためのレーザー集光照射光学系と撮像光学系を構築した.また,発光領域を特定するための分光計測系も同様に構築した.その場で加工条件を迅速に最適化するためのデータベース構築のために,プラズマ発光からの分光スペクトル計測(積算)や簡易的な積算画像計測を行い,相関性を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度試作したCMOSイメージセンサの画素が正しく動作しなかったため,撮像が確認できていない.ただし,それ以外の回路については動作が確認されているため,画素のみの問題と考えている.画素の動作不良の原因は,フォトダイオード関連のドーピング濃度が想定したものと実際で異なっていたためであると推定している.この対策として年度内に再試作を行ったが,今年度末の時点でまだ動作確認に至っていない.ただし,同じ時期に試作した画素は光に反応しているため,再試作センサが動作する可能性は高いと考えている.光飛行時間に基づく距離画像計測の原理確認実験として,ファンクションジェネレータにより周波数5MHzで強度変調したレーザー光を測定対象に照射し,提案手法に基づく高機能イメージセンサを用いて画像を取得して距離計測を行った.これにより,フレームレートの10,000倍以上の周波数を持つ光信号の位相を検出し,測定可能距離の数パーセントの計測精度で距離計測が可能であることを示している.さらに,10 MHzで変調が可能なLED光源により測定対象を照明し,マルチアパーチャ撮像システムを用いた圧縮センシング原理による時間分解画像の取得を行い,約6nsの時間分解画像を得ることができた. 光加工応用については,ナノ秒短パルスレーザー[数mJ/pulse, 数nsec パルス]による加工において発生するプラズマ発光と被加工材料の時間形状変化を連続したシングルショット撮像を行うための実験系を構築した.また,これを用いて簡易実験を行い,発光スペクトルと積算画像計測との間において相関性があることを確認した状況にある.次の段階では開発された高速度撮像システムを用いて連続したシングルショット撮像を行う.
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今後の研究の推進方策 |
再試作したイメージセンサの動作確認とチューニングを行い,時間分解特性を確認するとともに,カメラシステムを構築する.また,1年目および2年目に確立した圧縮画像の再構成アルゴリズムおよび,最適なシャッタパターンの設計手法をもとに,試作したカメラにより得られた画像から時間分解画像列の復元を試みる.並行して,開発済みの超高速カメラを用いて,ロングレンジ光飛行時間距離画像計測,レーザ加工におけるプラズマ発光過程の観察を行う.前述の超高速カメラの動作が確認され,特性を定量的に把握した時点でカメラを交換し,これらの応用に適用する.5MHzの変調レーザーを用いた光距離画像計測では,1フレームの観測期間内の時間分解を行うことができていなかった.また,10 MHzの変調LED光源を用いた時間分解画像の取得ではまだ距離画像を得ていない.これらの結果を踏まえて,マイクロ秒レベルの時間分解能での距離画像の取得を行う.そのためには画像取得精度の向上が必要であるため,ノイズの低減やマルチアパーチャ間のレジストレーションの精度の検討を行う.さらに圧縮センシングを適正に行えるパターンの検討や,マルチアパーチャ間の視差を利用した距離画像計測のレンジ拡大などを検討する.レーザ加工については,開発している高速度撮像システムの仕様・特性に合わせた光学・計測系の微調整を行う.この上で,光加工における 材料(ワーク)・加工環境(ガス種・ガス圧)の条件を変えた試験と分析を行うことによって,任意の信号計測が行い易い条件と高速度撮像画像との相関性を見つけ,これらのデータベース化を進め,効率的に加工条件を見つけ出せるシステム(高効率で自由度の高い超高速撮像システム)を実現させる.
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