研究課題/領域番号 |
15H03992
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
石井 仁 豊橋技術科学大学, リーディング大学院教育推進機構, 特任教授 (20506175)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | MEMS / 細菌 / 蛍光 / レジオネラ |
研究実績の概要 |
本年度は、これまでターゲット細菌として検討してきたレジオネラ属菌を中心として、種々の細菌に挟空間での閉じ込めを適用し、自由な運動を奪った状態での細菌挙動を検討した。 具体的には、細菌の存在する空間の体積を、細胞内寄生を模擬するマイクロ空間レベルから、レジオネラ属菌の存在する水滴のミリメートルオーダーまで変化させたマイクロ流路を作製し、これに細菌を導入して、空間体積依存性を蛍光スペクトルとスペクトル形状の時間依存性を指標として観測した。 MEMS技術を用いて作製したPDMS製マイクロ流路チップにレジオネラ属菌であるレジオネラ・ニューモフィラとレジオネラ・デュモフィをMEMSの造る微小空間に閉じ込め、紫外光照射に対するストレス応答に関して詳細に検討した。2種類のレジオネラ属菌をぞれぞれマイクロビーズと懸濁し、各々マイクロ流路チップに導入して、マイクロビーズの造る空間にレジオネラを閉じこめることにより、これらレジオネラ属菌の運動制限をマイクロ空間で実現し蛍光を検出した。さらに、蛍光スペクトルの励起光照射時間依存性を検討した。この時間依存性は細菌の種類によって異なることが示された。 レジオネラ・ニューモフィラ、レジオネラ・デュモフィともに閉じ込め空間がミリメートルオーダーと大きい場合すなわち自由に運動できる場合には、いずれも紫外光照射によって蛍光を発しなかった。すなわち自由運動下では蛍光物質を産生しない。一方、両者をマイクロ空間で運動制限すると、紫外光照射に伴い青色から緑色領域の蛍光を発することを確認した。これらの事実は運動制限下で紫外光照射が蛍光物質産生のトリガーとなっていることを明瞭に示したものと言える。さらに、蛍光スペクトルの紫外光照射の時間依存性は両者で大きく異なることも見出した。以上の結果からMEMSを用いて細菌の示す新たな性質発見への端緒を開くことができたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、これまでターゲット細菌として検討してきたレジオネラ属菌を中心として、種々の細菌に挟空間での閉じ込めを適用し、自由な運動を奪った状態での細菌挙動を検討した。 具体的には、細菌の存在する空間の体積を、細胞内寄生を模擬するマイクロ空間レベルから、レジオネラ属菌の存在する水滴のミリメートルオーダーまで変化させたマイクロ流路を作製し、これに細菌を導入して、空間体積依存性を蛍光スペクトルとスペクトル形状の時間依存性を指標として観測した。 MEMS技術を用いて作製したPDMS製マイクロ流路チップにレジオネラ属菌であるレジオネラ・ニューモフィラとレジオネラ・デュモフィをMEMSの造る微小空間に閉じ込め、紫外光照射に対するストレス応答に関して詳細に検討した。蛍光スペクトルの励起光照射時間依存性を検討した。この時間依存性は細菌の種類によって異なることが示された。 レジオネラ・ニューモフィラ、レジオネラ・デュモフィで比較すると、蛍光スペクトルの紫外光照射の時間依存性は両者で大きく異なることを見出した。レジオネラ・ニューモフィラでは、紫外光照射をトリガーとして青色蛍光強度が漸増する。一方、レジオネラ・デュモフィでは、紫外光照射直後に青色蛍光を発し、その強度は急減し、後に別のピークを持つ青色蛍光を発するようになる。以上のようにレジオネラ属菌の種類によって全く異なる蛍光スペクトルの変化の観測に成功した。従来蛍光を発することの無い細菌として知られる大腸菌でも、MEMS空間での運動制限により蛍光を発する、すなわち蛍光物質を産生することも示された。マイクロ空間における種々の細菌挙動は細菌学における新たな知見をもたらしつつある。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検討で、少なくとも二種類のレジオネラ属菌では空間への閉じ込めによる運動制限という物理的な刺激と光刺激に対して従来知られていなかった、かつ互いに全く異なるストレス応答としての蛍光特性を取得できた。今後は、これらのストレス応答(新たな代謝系の発現による蛍光物質の産生)の起源の解明への着手、これらストレス応答を利用した細菌識別、細菌検知デバイスのプロトタイプ構築、液性に対するストレス応答観測へと研究を展開する。
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