研究課題/領域番号 |
15H03992
|
研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
石井 仁 豊橋技術科学大学, リーディング大学院教育推進機構, 特任教授 (20506175)
|
研究分担者 |
齋藤 光正 産業医科大学, 医学部, 教授 (00315087)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | MEMS / レジオネラ / 蛍光 / フォトゲート |
研究実績の概要 |
平成27年度にはレジオネラ属菌の存在する空間の物理的な大きさ、すなわち体積依存性を比較した。ミリメートルオーダーの空間、すなわち自由運動の際には蛍光を発することなく、一方、MEMSの作るマイクロ空間に閉じ込めたときに、光照射をトリガーとして蛍光物質を産生し始めることを報告した。さらにレジオネラ・ニューモフィラとレジオネラ・デュモフィではその蛍光スペクトル形状の励起光照射時間依存性に大きな違いが存在することを示した。 今年度は、前年度の検討を踏まえて、これらレジオネラ属菌の発する蛍光スペクトル培養条件依存性へと検討を進めた。その結果、レジオネラ・ニューモフィラにおいては培養時の温度、撹拌条件に依存して蛍光スペクトル形状が変化することが分かった。一方、レジオネラ・デュモフィでは培養条件による蛍光特性に大きな依存性は見られなかった。以上の様に、必ずしもその理由は定かではないが、これら培養条件や空間の大きさなど細菌の生存環境に応じて光と微小空間への閉じ込め刺激に対して発する蛍光スペクトルには細菌に応じた特徴的な変化があることをMEMS流路チップを用いて見出した。さらにフォトゲート型光センサを作製しMEMS流路チップと組み合わせ、レジオネラ・デュモフィからの蛍光検知の検討を行った。この結果、蛍光顕微鏡と分光器を用いて従来観測していたものと同様の蛍光強度の時間依存性の取得に成功した。この蛍光検知システムでは従来用いてきた大きな蛍光顕微鏡も必要とせずさらにフィルターなど光学部品も不要なため、本研究の目的の一つであるオンチップ細菌センサの基本型構築を示すものであると考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
レジオネラ属菌の生存する空間体積依存性検討からレジオネラ属菌の発する蛍光スペクトル培養条件依存性へと検討を進めた。その結果、レジオネラ・ニューモフィラにおいては培養時の温度、撹拌条件に依存して蛍光スペクトル形状が変化することが分かった。一方、レジオネラ・デュモフィでは培養条件による蛍光特性に大きな依存性は見られなかった。必ずしもその理由は明らかではないが、培養条件や空間の大きさなど細菌の生存環境に応じて光と微小空間への閉じ込め刺激に対して発する蛍光スペクトルには細菌に応じた特徴的な変化のあることを見出したこと。このように細菌の持つMEMS空間における新たな性質を明らかにし、蛍光スペクトルと言う分光学的特性として記述している点は目標通りである。さらにフォトゲート型光センサとMEMS流路チップを組み合わせ、レジオネラ・デュモフィからの蛍光検知に成功した。この蛍光検知システムでは従来用いてきた大きな蛍光顕微鏡やフィルターなど光学部品も不要なため、本研究の目的の一つであるオンチップ細菌センサの基本型構築への端緒となる。以上からおおむね順調に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度の検討でフォトゲートによって取得した蛍光からの信号は微弱であるため、これをより明瞭に取得するために、電子回路およびMEMS流路チップ構造改良の二面からの検討を進める。 さらに平成28年度に取得した、培養条件によって異なる細菌の蛍光スペクトルの情報を利用して、MEMS流路チップに混合された細菌からの蛍光をフォトゲート型光センサで取得し、細菌の識別検討へと研究を展開する。 また、単細胞生物のストレス応答に関する物質的描像を検討するため、MEMS流路チップを用いて得られた細菌のストレス応答に関して、生物化学的な検討を行い細胞内での代謝に関する反応化学的解析を進める。
|