研究課題/領域番号 |
15H03996
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
早瀬 潤子 (伊師潤子) 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (50342746)
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研究分担者 |
渡邊 幸志 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 電子光技術研究部門, 研究員 (50392684)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 量子計測 / 量子制御 / ダイヤモンドNV中心 / 磁気共鳴 / 磁場イメージング / ダイヤモンド成長 / ダイヤモンド微細加工 |
研究実績の概要 |
集束イオンビーム装置および反応性イオンエッチングを用いてダイヤモンドの微細加工を行なうプロセスを確立し、umオーダーの溝構造を施した高純度ダイヤモンド(001)基板を作製した。その基板上に窒素ドープ化学気相成長法によってダイヤモンド薄膜を成長し、NVペアを生成した。自作の共焦点レーザー顕微鏡および光検出磁気共鳴(ODMR)装置を用いて、生成したNVペア集合体の光学・スピン特性を評価し、溝構造内部に選択的にNVペアを生成できること、NVペアの配向方向を揃えられること、溝構造の方向によってNVペア配向方向を制御できることを見出した。我々の開発したNVペア生成法を用いることで、位置や配向が制御されたNVペア集合体を生成でき、磁場センシングに適したNVペアを生成できることが分かった。またNVペアの密度やコヒーレンス特性が溝の幅や深さに依存することや、溝内部に自然形成される結晶面方位がNVペア密度や配向を決定する上で重要な役割を果たしていることがわかった。これらの知見は、NVペアの特性をより高度に制御する上で重要なものである。さらにNVペア電子スピンのコヒーレンス測定を行ない、比較的長寿命のコヒーレンス時間を有すること、ダイナミカルデカップリング法を用いることで1 msまでコヒーレンス時間を延伸できることを見出した。また生成したNVペア電子スピンを用いて、スピンエコー法およびCPMG法による交流磁場センシングのデモンストレーションを行なうことに成功した。現在のところ最小検出可能磁場は10 nT/Hz-1/2程度であり、比較的良い値を得た。 また、広視野を観測可能なODMRイメージング装置を新たに設計、構築した。空間均一性の良い広帯域マイクロ波アンテナを新たに設計し、ODMRイメージング装置に組み込むことで、80×80 um四方のODMRイメージングを取得することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サンプル作製、装置構築ともに、当初の計画通り順調に進んでいる。サンプル作製に関しては、NIMSのナノテクプラットフォームおよびNICTフォトニックデバイスラボの協力の下、ダイヤモンドプロセスを確立し、サンプル作製をルーティン的に行なう環境を整えられた。今後はフィードバックによるサンプル特性の高度化を加速して進められると考えられる。また装置構築を進めることで、マイクロ銅ワイヤに流れる電流により誘起された交流磁場を検出することに成功しており、磁場センシングに関しても順調に進んでいる。ODMRイメージング装置に関しても、現在まで計画通り構築が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
サンプル作製に関しては、化学気相成長の条件をふることで、特性の良い高密度NVペアを生成することを目指す。また基板溝構造の形状を変えることで、NVペアの特性がどう変化するか系統的に調べ、NVペア特性の制御メカニズムを明らかにし、より制御性の良いNVペア生成法開発を目指す。装置構築に関しては、ODMRイメージング装置に、マイクロ波パルス発生器を組み合わせ、スピンエコーやCPMG信号の2次元イメージを取得することを目指す。
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