研究課題/領域番号 |
15H03998
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研究機関 | 豊田工業大学 |
研究代表者 |
岩田 直高 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40708939)
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研究分担者 |
青柳 克信 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 上席研究員 (70087469)
神谷 格 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10374018)
荒木 努 立命館大学, 理工学部, 教授 (20312126)
黒瀬 範子 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 専門研究員 (50520540)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 窒化物半導体 / エピタキシャル / 格子欠陥 / オーミック電極 / 保護膜 / 先端機能デバイス / 深紫外 |
研究実績の概要 |
Si基板上へのAlGaN結晶成長において、Siのメルトバック現象を防ぎながら良質なAlGaN層を成長させるためには、Si上のバッファー層にAlNの適用が必要不可欠である。しかしながら、AlNは不純物準位が深いため導電性が得られず、この層を通して電流を流す縦型デバイスをSi基板上に作製することは不可能であった。これを解決するため、Si基板上にトリメチルアルミニウム(TMA)を先出しし、窒化した後にAlNを形成することにより特定の結晶成長条件下でAlN層の中に微小ホール(自然形成ビアホール)が形成され、次にAlGaN層を成長することによりその自然形成ビアホールが埋め込まれて、伝導性のあるAlNバッファー層が形成できることを我々は見出した。その自然形成ビアホールの数(密度)と大きさは先出しTMAの量や結晶成長条件で制御できることを予備実験で明らかにしていた。当該年度は、この自然形成ビアホール形成法の改善を目指して、Si(111)基板からのオフ角度と結晶性および伝導特性の関係を検討した。その結果、基板オフ角により自然形成ビアホールの形状が大きく変化し、それに伴ってAlNバッファー層の縦方向の導電性も変わることが分かった。 一方、Si基板上の縦型チャネルFETの実現を目指し、作製プロセスとデバイス構造の検討を進めた。当該年度は横型のヘテロ接合FET構造ではあったが、低接触抵抗なオーミック電極技術と素子表面の保護膜の研究を行った。特に、素子表面を安定化させるパッシベーション技術では、窒素プラズマを用いた原子層堆積法で形成したSiN膜は素子表面の未結合手を安定に終端し、高い耐圧とドレイン電流を同時に得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請時の研究計画に照らして評価するならば、若干の遅れはあるものの、本年度の素子試作に向けた研究は進められたと考えている。この若干の遅れは、結晶成長の研究においては、当該年度の前半で結晶成長装置の不具合が多発したため、【研究実績の概要】で示した自然形成ビアホール形成法の改善研究に支障が発生したためである。しかしながら、Si(111)基板からのオフ角度と自然形成ビアホール形状やAlNバッファー層の縦方向導電性の関係は判明したため、問題の無い範囲と考えている。一方、デバイス開発の研究では、横型のヘテロ接合FETに対する低接触抵抗なオーミック電極技術と素子表面の保護膜の研究で所期の成果を得たが、縦型デバイスへの展開が遅れた。これも、高濃度p型AlGaNの形成やこれへの低接触抵抗オーミック電極の準備は進めており、問題無いと考える。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度でSi(111)基板からのオフ角度と自然形成ビアホール形状やAlNバッファー層の縦方向導電性の関係が判明したため、今後は、この研究をさらに進めることにより、より低抵抗なAlN層の実現を図る。そして、その上に形成するAlGaN層の結晶性の改善を図る。このAlGaN層は深紫外域での縦型のLEDやセンサーの動作層となるため、高品質なAlGaN層の形成が必要不可欠であり、その結晶成長条件を明らかにする。これらの得られた結果を取りまとめて、学会発表を行う。 次に、低抵抗なp型AlGaN層の実現を目指してアクセプタ不純物の高濃度ドーピングと活性化の高効率化を目指す。特に、縦型FETへの適用を想定した微小で高濃度なp型領域の形成を目指す。 縦型デバイス開発の研究では、これらAlGaNに対する結晶性の改善や高濃度p型層の実現を適用して高効率LEDや高感度センサーの実現を図る。これは、最終的な研究目的であるより短波長(予備実験では350~400nmでの発光)で高出力縦型深紫外LEDと受光波長を制御した高感度縦型深紫外センサーアレーにつながる。 一方、縦型のトランジスタでは、まず、微小な高濃度なp型AlGaN領域の形成とこれへの低接触抵抗を実現するオーミック電極技術の研究を進める。さらに、開発した窒素プラズマを用いた原子層堆積法によるSiNパッシベーション膜の展開を進めるとともに、作製プロセスと縦型トランジスタ構造の検討も進める。これら技術の完成度によるが、年度内での縦型のトランジスタの一次試作を目指す。 さらに、LEDやセンサーと組合せたモノリシック化による深紫外センシングシステムの実現に向けた、デバイス構造や作製プロセス技術の構想検討を始める。
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