昨年度に投稿したシリコントンネルFET素子における高温量子ビット動作、および室温単一電子伝導をまとめた論文はScienticif Reports誌に掲載された。また掲載直前にプレスリリースを行い、日刊工業新聞、日経新聞電子版などに記事が掲載された。 昨年度に引き続き、トンネルFET素子の高温量子ビットについて研究を行った。昨年度に観測された温度1.5ケルビンでのスピン量子ビット動作(単一電子スピン共鳴)について、その量子ビットエネルギー(ゼーマン分離エネルギー、あるいは電子スピン共鳴周波数)がゲート電圧に依存することを利用し、一定磁場のもとでゲート電圧を変調することで量子ビットエネルギーを変調する実験を行った。この結果、変調周波数が量子ビットのコヒーレンス時間の逆数(約4MHz)より十分に小さい場合には変調の重みをそのまま反映した量子ビット励起スペクトルが得られた一方で、変調周波数がコヒーレンス時間の逆数より十分に大きい場合には、量子ビットの励起スペクトルに特徴的な干渉効果が現れた。この干渉パターンは数値計算の結果とよい一致を示した。これらの結果をまとめた論文はPhys. Rev. Lett.誌に投稿、アクセプトされ、現在出版準備中である。 複数の国際シンポジウムに招待されこれら2件の成果について講演を行った。また量子ビットの高温動作に関する解説記事を日本物理学会誌編集員会より依頼されへ現在執筆中である。 昨年行った2スピン同時コヒーレント制御の実験結果をまとめ、日本物理学会で発表した。
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