平成28年度までの研究で,デジタル指向性形成によって広角まで監視可能な,方位角電波到来方向検出車載ミリ波レーダシステムに適した,列間隔が短く幅の狭い2列広帯域導波管スロットアレーアンテナを,プラスチック成形で開発した.その成果を,米国電気電子学会の論文誌IEEE Transactions on Antennas and Propagation(インパクトファクター2.957)に投稿したところ,平成29年5月に採録が決定し,8月号に掲載された. 平成29年度は,さらにその研究を推進し,提案構造のポテンシャルを確認するべく,広帯域性を維持しつつ,どこまで高利得が実現できるか,高利得で広帯域という究極のアンテナの開発に取り組んだ.平成28年度に開発した広帯域2列アレーアンテナを16個配列し,これらをトーナメント給電する給電回路を設計して,32列アレーを実現した.給電回路には,新方式の導波管90度薄形ツイスト回路を開発することで給電導波管の配線自由度を高め,層数を増やすことなく2層の導波管配線だけで,大きい開口面の32列アレーを実現した. ワークステーションによる電磁界解析の結果,利得が30dBi以上となる周波数帯域幅14.9GHzという広い周波数範囲を実現した.その成果を,平成30年2月に開催された電子情報通信学会アンテナ・伝播研究会で発表している.今後,プラスチック成形で試作し,特性を実験で確認して,その成果を国際会議や論文誌で発表していく.
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