研究課題/領域番号 |
15H04006
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
王 建青 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70250694)
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研究分担者 |
安在 大祐 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40611116)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 通信・ネットワーク工学 / ボディ・エリア・ネットワーク / 医療・ヘルスケアICT / 電磁両立性(EMC) / インプラント通信 / ウェアラブルデバイス |
研究実績の概要 |
本研究では,ウェアラブル/インプラント生体情報センシングから診断・治療までを統合するボディ・エリア・ネットワーク(BAN)を,ライセンス不要の10~60MHz微弱電波帯広帯域通信方式で実現させることと,その安全・安心を確保するためのEMC(電磁両立性)イミュニティ試験法を確立させることを目的としている. 平成27年度では,まず,微弱電波帯におけるウェアラブルBANとインプラントBANの統合実現を目指し,人体組織による伝送損の大幅な低減と人体深部への容易な侵入が可能となる10~60MHz帯を選定し,人体における伝送路特性を電磁界解析,生体等価液体ファントム及び実生体(豚)を用いた実測により解明した.次に,各種代表的狭帯域変調方式に対し,搬送波不要な広帯域インパルス・ラジオ(IR)通信方式の優位性を計算機シミュレーションにより示し,微弱電波法を満たす送信電力でウェアラブル/インプラント両方において10Mbpsの伝送速度,0.001以下の(物理層)ビット誤り率が達成できることを明らかにした.また,シミュレーション結果を基に,10~60MHz微弱電波帯ウェアラブル/インプラント通信機の構成設計とパラメータ決定を行い,通信機の試作を予定より先行して開始した.さらに,インプラント送信機用超小型埋め込みアンテナの開発においては,磁性材の高透磁率と誘電率の両方の波長短縮効果を生かし,アンテナエレメントを円筒型磁性材上に形成することにより,2cm以下の寸法のコイル型アンテナを実現した. これらの成果は,解説1篇,学術論文3篇,国際会議論文2篇にまとめられ,公表された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成27年度の実施目標は,①微弱電波帯におけるウェアラブルBANとインプラントBANの統合実現法の検討と,②インプラント通信用広帯域超小型アンテナの設計・開発である. それに向けて,①ではまず,10~60MHzの微弱電波帯を選定し,人体数値モデルを用いた電磁界解析,生体等価液体ファントム及び実生物(豚)を用いた実測を行い,ウェアラブル伝送路とインプラント伝送路の伝送特性を求め,伝送路モデルを構築できた.次に,その伝送路特性を基に,各種の狭帯域変調方式との比較検討により,広帯域のインパルス・ラジオ(IR)通信方式の採用を決め,10~60MHz微弱電波帯のパルスをそのまま伝送することで,微弱電波法を満たす送信電力でウェアラブル/インプラント両方において10Mbpsの伝送速度,0.001以下の(物理層)ビット誤り率が達成できる統合通信機の実現法と構成を明らかにできた.さらに,その実現に向けて,平成28年度実施予定の通信機の回路設計と試作を今年度に先行して開始した. また,②では,磁性材の高透磁率と誘電率の両方の波長短縮効果を生かし,アンテナエレメントを磁性材上に形成することにより,従来困難とされる10~60MHzでの超小型アンテナ(最大寸法2cm以下)を電磁界シミュレーションにより設計できた.これにより,30MHz付近で-10dB以下のS11(反射)特性,約10MHzの帯域幅を有するインプラントアンテナが実現され,①で開発される統合通信機に実装することで,インプラント通信の検証が可能となった. 以上のことにより,平成27年度の目標はすべて達成された上に,通信機の試作も予定より先に進んでおり,当初の計画以上に研究が進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度では,下記の2点を中心に研究を推進する. ①ウェアラブル生体信号センシング電極とウェアラブル送信電極を共用する技術の開発 本来では心電等のウェアラブル生体信号センシング電極とウェアラブル人体通信のための送信電極のそれぞれに別の電極を用いられるが,ウェアラブル/インプラント統合通信機の小型化を念頭に,センシング電極と送信電極の共用化技術を開発する.ウェアラブル通信を最速10Mbpsで実現することで,生体信号センシングの合間にデータ伝送を行うことが可能となり,電極の共用も可能となる.また,ウェアラブル生体センサと通信機のグラウンド線間の電位の差異の問題を,容量結合による接続技術を導入することで解決し,生体信号センシングとウェアラブル送信を時分割で行う共用電極を実現し,通信機全体の小型化を達成させる. ②ウェアラブル/インプラント通信機の試作と検証 インプラントアンテナ部に磁性材を取入れての超小型化と,ウェアラブル部の生体信号センシングとウェアラブル送信電極の共用技術は,統合通信機全体の小型化に大きく寄与する.このために,ウェアラブル通信には電極を,インプラント通信には超小型アンテナを使用し,アンテナ・電極を除いた送受信機部は同一構成として,昨年度から進めてきた統合通信機の設計と試作を完了させ,体外上半身,体内30cmまでに0.001以下のビット誤り率が達成できることを実証する.具体的には,微弱電波法及び比吸収率(SAR)指針値を満たす送信電力において,ウェアラブル通信については,実際の心電図,筋電位を例として,人体がPCに触れることでウェアラブル伝送の検証実験を行う.一方,インプラント通信については,人体特性を模擬した液体ファントムまた豚を用いて,10Mbps以上のインプラント通信の実現を検証する.
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