研究課題/領域番号 |
15H04012
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山下 真司 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (40239968)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 光ファイバレーザ / モード同期 / 中赤外 / カーボンナノチューブ / グラフェン |
研究実績の概要 |
波長2um帯の中赤外ナノカーボン受動モード同期光ファイバレーザを実現した。利得媒質としてはTmドープ光ファイバを用いた。可飽和吸収素子としてはCNTポリマーフィルム、およびグラフェンを用い、両者でモード同期を実現した。さらに、分散補償光ファイバを挿入することで共振器の分散量を調節し、ソリトンモード同期だけではなく、ストレッチパルス・散逸ソリトンモード同期も実現することができた。ストレッチパルスおよび散逸ソリトンの場合には通常の光ファイバの異常分散を利用してデチャープすることで約1ps程度までパルス圧縮が可能なことも示した。 また、Tmドープ光ファイバを利得媒質として用い、さらに高分散光ファイバおよびチャープ光ファイバグレーティング(CFBG)を高分散媒質として、光変調器により分散チューニングをかけることにより中赤外波長帯で広帯域・高速波長掃引光源を実現できた。2um帯LN変調器への変調周波数を変化させることで、波長1870-1950nmの80nmの範囲で波長可変なリングレーザを実現した。 さらに、これらの光源のガス分光分析およびOCT応用についての実験も進めている。 これらに加えて、新しい構成として、可飽和吸収素子も変調器も必要としないTmドープ光ファイバ能動モード同期レーザを提案し、実証した。Tmの上位準位の寿命は数100usと他の希土類元素と比べて短い。これは励起光の強度変化によって高い周波数までTmドープ光ファイバ利得を変調できることを意味している。Tmドープ光ファイバリングレーザで波長1.55umの励起光に変調をかけた結果、変調周波数を基本繰り返し周波数である6.7MHzに設定したときに能動モード同期をかけることができ、約8psのパルスが得られた。この技術は共振器内に可飽和吸収素子も変調器も必要としないため、高出力化および高信頼性の面で有利である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画は順調に進展しているのに加え、新しい構成として、可飽和吸収素子も変調器も必要としないTmドープ光ファイバ能動モード同期レーザを提案し、実証した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年に引き続き、波長2um帯のナノカーボン受動モード同期Tmドープ光ファイバレーザからのフェムト秒領域の短パルスを発生の研究を進める。モード同期素子について、昨年までのナノチューブ・グラフェン可飽和吸収素子のみならず、励起光変調による能動モード同期の研究をさらに進める。また、共振器内に位相変調器を導入した9の字型能動・受動モード同期レーザの検討を行う。さらに、アデレード大学と共同研究を進めている波長3.5 um帯Erドープ光ファイバレーザについても同様の検討を進める。 分散チューニングについては、昨年度の成果を活かし、Tmドープ全偏波維持光ファイバ分散チューニング波長掃引レーザの実現を目指す。同時に、昨年から検討中の光ファイバ型グラフェン光変調器による分散チューニングの実現を目指す。 応用に関しては、昨年に構築したガス分光分析システムを開発した光源と合わせ、種々のガスの中赤外分光を進めるとともに、呼気分析など医用応用の検討も進める。また中赤外波長帯分散チューニング波長掃引レーザを用いたSS-OCTを検討する。昨年までの検討で深達度については波長よりも波長掃引レーザのコヒーレンスでリミットされるため、新たに考案したデジタルコヒーレントOCTによりこの補償を目指す。
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