波長2μm帯の中赤外ナノカーボン受動モード同期光ファイバレーザの研究を引き続き進めた。利得媒質としてはTmドープ光ファイバを用い、可飽和吸収素子(SA)としてはCNTポリマーフィルム、およびグラフェンを用いた。励起光変調によるTmドープ光ファイバ能動モード同期レーザについては、シミュレーションにより励起光変調によるモード同期のメカニズムを明らかにして最適化を進めるとともに、繰り返し周波数を下げれば波長1.5μm帯Erドープ光ファイバレーザにも適用可能であることを示した。また9の字型モード同期光ファイバレーザについては、昨年度に提案した位相変調器を用いる方法に加えて、周波数シフタ(AOM)を用いる方法でも安定なモード同期が実現できることを示した。AOMの駆動周波数約 38MHzでスペクトル幅1.3nmでパルス幅3.9ps、繰り返し周波数3.7MHzの安定なパルス発生を確認した。 また、デュアルコム分光への応用を目指して、新たにCNT-SAを用いた波長2μm帯の双方向発振Tmドープ受動モード同期光ファイバレーザの安定な動作を世界で初めて実現した。パルス幅は1.2psで繰り返し周波数約22MHzであり、両周り光の繰り返し周波数差は約600Hzであった。さらに、アデレード大学との共同研究として、波長3.5 μm帯Erドープ光ファイバレーザのグラフェン受動モード同期を分散の制御が不完全ではあるが初めて観測した。同時に、励起光変調法の適用についても共同でシミュレーションを行い、可能であることを示している。
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