本研究では,超広帯域電磁波を用いた超分解能レーダ技術を開発する.室内計測等の開口面積が制限される状況では,十分な画像再現域を確保できず,目標認識が困難となる.本研究では多偏波及び多重散乱波を用いた従来の限界を超えるレーダ画像化法を確立し,上記問題を克服する. 平成29年度では,①超分解能ドップラー速度推定法の開発とRPM(Range Points Migration)法との融合,②多重散乱環境におけるドップラー速度を利用した多重散乱波識別法の構築、③実際の人体モデルにおける提案法の画像化性能の検証,④多偏波エリプソメトリを用いた誘電率推定 に関する課題を実施した.①では,ガウスカーネル密度推定を導入した全く新しいドップラー速度推定法を提案し,フーリエ変換法でのドップラー速度分解能を大幅に超え,かつ高い時間分解能でドップラ速度を推定する手法を提案した。また同手法をRPM法と融合することで,高い時間分解能での動きベクトル推定及び目標画像化を実現させた.②ではドップラ速度を利用することで多重散乱波を識別し,RPM法を統合することで,虚像を抑圧し,かつ画像化領域を拡大する方法を検討し,数値計算例によりその有効性を確認した。③では,RPM法を精緻な人体モデルとFDTD(Finite Difference Time Domain)法による高精度な3次元電磁界解析法で得られたデータに適用し,実際の人体モデルにおいてもRPM法が合成開口処理法等に比べて高い精度で、人体を画像化することを示した.④では,多偏波の反射係数比から非接触で誘電率を推定する方法をRPM法と統合し,画像化された各散乱点に対して誘電率を付与することで高次元のレーダ画像化を実現させた.
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