研究課題/領域番号 |
15H04016
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
莅戸 立夫 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 准教授 (00261149)
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研究分担者 |
ベイ ジョンソク 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20165525)
工藤 博幸 筑波大学, システム情報系, 教授 (60221933)
岸上 明生 岐阜女子大学, 家政学部, 教授 (40261177)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ミリ波 / 走査型プローブ顕微鏡 / 熱放射計測 / 高分解能計測 / 画像再構成 / 温度分布画像化 / サーモグラフィー / 応用計測 |
研究実績の概要 |
本研究では,電波であるミリ波を用いた新たな画像計測技術,超高分解能走査型ミリ波サーモグラフィーの開発とその応用に関する検討を実施することを計画している。本画像計測技術は,放射計測により回折限界をはるかに超える微小空間分解能での温度分布画像化を達成できる可能性を有している。超高分解能走査型ミリ波サーモグラフィーを実現するための計測システムを構築,本システムの特性評価及び本システムの有用性を実証するための新規応用計測を実施して,本画像計測技術の実用化に資することを目的としている。本年度は主に,計測システムの高機能化,画像計測時間低減のための画像再構成法,応用計測に関する検討を実施した。以下に,具体的な検討事項と得られた成果を示す。 計測システムの高機能化に関しては,開発を実施している計測システムを対象として,画像の時間変化計測機能を追加した。放射計測の場合と同様の雑音状信号として,振幅変調されたノイズソースからのミリ波信号を対象として画像計測を実施し,時間変化を表す画像群の取得が可能な事を実証した。 画像計測時間低減のために,圧縮センシング法を用いた画像再構成に関する検討を実施した。数値ファントムを対象として,投影データ数を変化させた場合の再構成画像を比較した。その結果,従来用いているフィルター補正逆投影法による再構成画像と比較して,データ数を8分の1程度に減らしても同様の画像再構成が可能なことを確認した。 応用計測としては,血漿中で最も豊富なタンパク質であるウシ血清アルブミン(BSA, Bovine Serum Albumin)を測定対象として,その水溶液を140K程度まで冷却し,固体状態で,温度を変化しての放射計測を実施した。その結果,測定した温度範囲内で,タンパク質の構造変化によるものと考えられる放射強度の変化を実験的に確認することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
開発した計測システムの性能が目標より劣っている。更に計測システムより得られる画像の定量評価が十分でない。以上はマイナス評価要因であるが,プラス要因として,本年度実施したBSA水溶液を測定対象とする放射計測で,従来確認されていなかった新たな信号変化の計測に成功していることが挙げられる。本成果は,開発を実施している超高分解能走査型ミリ波サーモグラフィーの有用性を実証すると共に,新たな熱分析手法創出の可能性を示していると考えている。以上を総合判断して上記の区分とした。
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今後の研究の推進方策 |
計測システムより得られる画像の定量評価,システムの高感度化,高分解能化,高機能化と,応用計測として,タンパク質を対象とする放射計測を継続して実施する。応用計測においては,結果の評価,解析を容易にするために,様々な条件で調製された各種タンパク質溶液を対象として,数種同時に,温度毎に画像化を実施することを計画している。
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