研究課題/領域番号 |
15H04019
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
藤田 政之 東京工業大学, 大学院理工学研究科(工学系), 教授 (90181370)
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研究分担者 |
畑中 健志 東京工業大学, 大学院理工学研究科(工学系), 准教授 (10452012)
伊吹 竜也 東京工業大学, 大学院理工学研究科(工学系), 助教 (30725023)
向井 正和 工学院大学, 工学部, 准教授 (50404059)
河合 宏之 金沢工業大学, 工学部, 准教授 (70410298)
河合 康典 石川工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (90413765)
村尾 俊幸 金沢工業大学, 公私立大学の部局等, 講師 (00447038)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 制御工学 / 環境モニタリング / 人間・モバイルセンサネットワーク / 協調制御 / 階層制御 |
研究実績の概要 |
本申請課題は,人間・モバイルセンサネットワークの階層型協調制御システムの構築を目指して以下の3点を実施するものである:① 運動,視覚処理,人間の決定を受動性という共通概念で包括する理論を構築,② 遠隔地をつなぐ実験システムから得たデータをもとに人間の受動性を解析,③ 以上の結果に基づいて,ネットワークのオンライン最適化システムを構築.課題①:申請者が中心となり,人間とモバイルセンサ群を階層的に接続する新規の協調制御構造を提案し,人間が受動的という仮定の下で,目的の達成を理論的に証明した.つぎに,インターフェースとしてタブレットを用いた人間・モバイルセンサネットワークのシミュレータを構築し,人間の行動データを取得するシステムを構築した.また,河合(宏)准教授,河合(康)准教授,伊吹助教のグループは複数回の議論を重ね,以上の枠組みに視覚を含める問題設定の着想に成功した.課題②:研究分担者である畑中准教授が中心となり,課題①で得たデータから人間の受動性を解析した.結果として,当初の予想通り,人間の受動性がネットワーク構造に依存することを明らかにするとともに,受動性の達成を促進する機構を設計した.この手法は課題①で構築されたシミュレータを用いて検証され,複数のネットワークに対してその有効性が示された.さらに,複数の人間に対して解析を行い,個人差の影響を低減する機構を設計し,有効性を検証した. 以上の成果は,当該分野の最重要国際会議であるIEEE Conference on Decision and Controlに採択され,大きな反響を与えた.また,本会議において,以上の成果を中心にチュートリアル講演を行い,研究成果の広報に努めた.以上の活動が認められ,類似研究のトップ研究者のみが参加する書籍に章の執筆を依頼された. 課題③:当初の予定通り,論理混合型予測制御の文献調査を行うとともに,その求解ソフトの利用法を習得した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題①に関しては,当初予定していた通り,階層型協調制御システムの提案と理論の証明に成功し,タブレットを用いたHuman-In-The-Loopシミュレータの構築を終えることができた.加えて,課題②と連携し,システムの改善まで踏み込めた点は当初の計画以上の進展であるといえる.ただし,ロボット間協調における視覚情報の取り込みに関しては,妥当な問題設定の着想には至ったものの,解の導出には至っておらず,この点は次年度以降に課題が残った.他方,当初次年度以降にと考えていた学会等へのアピールが,本年度中に実を結び始めた点は好意的に評価できる.課題②に関しては,当初の計画通り,受動性の解析方法を考案し,実際に意味のある情報を抽出することに成功した.加えて,受動性を促進する機構の提案と有効性の検証,さらには人間の個人差の解析およびその低減化手法の提案と有効性検証ができた点は当初の計画以上の進展であると評価できる.実験システムの構築に関しては,申請者のグループにおいて7台のロボットによるシステムが完成し,タブレット以外にマウスや3Dモーションセンサ,ゲームコントローラなどをインターフェースとするシステムまで構築できた点は当初の計画以上の進展であると評価できる.一方,当初東京―石川を遠隔につなぐことを計画したものの,その実現には至らず,次年度以降の課題として持ち越された.課題③に関しては,文献調査を終えることができ,おおよそ当初の計画通りの進捗であると評価できる.ソフトウェアの選定を終えて,解法を実装する環境まで構築できた点は若干ではあるが当初の計画を超える進捗ペースである.
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今後の研究の推進方策 |
課題①に関しては,昨年度提案し,改良した制御構造に対して,通信遅れの影響を除去する機構を設計し,目的の達成を理論的に証明する.当初予定した人間の受動性を促進する機構の設計と多様なインターフェースのテストは昨年度中に成果を得ることができたため,これは予定しない.代わりに,やや進捗が遅れている視覚に基づく制御の融合と3次元への拡張を実施するグループに申請者も加わり,研究の加速を狙う.また,その進捗に伴い,3次元シミュレータの構築と人間データの計測を実施する.
課題②に関しては,遠隔実験システムの構築に向けて,申請者の研究グループに所属する博士課程の大学院生を短期で河合(康)准教授のグループに派遣し,共同してシステム構築にあたる.また,人間受動性解析については,昨年度までにある程度の知見を得た人間の学習,個人差,インターフェースの影響の解析はこれをキャンセルし,主に実験データの解析に取り組む.特に,ロボットの物理ダイナミクスと通信遅れ,フィードバック情報の次元が人間の特性に与える影響に焦点を当て,これらによって人間の受動性が崩される場合にはそれを克服する機構の設計に取り組む.さらに,当初の予定通り,ネットワーク構造と人間の特性の関係をモデル化する.
課題③に関しては,時相論理混合型予測制御問題を混合整数計画問題として定式化し,目的の達成を理論的に証明する.つぎに,オンライン最適化のコードを自動生成し,これを課題②の研究チームによって実装し,結果の妥当性を検証する.
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