研究課題/領域番号 |
15H04025
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
氏家 勲 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (90143669)
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研究分担者 |
岡崎 慎一郎 香川大学, 工学部, 准教授 (30510507)
河合 慶有 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 講師 (90725631)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | バイオグラウト / コンクリート / 補修 / ひび割れ / 漏水 |
研究実績の概要 |
平成28年度は微生物代謝を利用した補修材料の実構造物への適用性を検討するために,温度及びコンクリート表層のイオン移動が炭酸カルシウムの析出に与える影響について検討した。結果をまとめると以下のとおりである。 温度によって炭酸カルシウムの析出量及び析出時間が異なることが明らかとなった.特に,10℃の環境では20℃の環境の結果と比較して炭酸カルシウムの析出時間が遅延することが確認された.一方,30℃の環境では微生物の代謝が活性化され析出過程の早い段階から炭酸カルシウムが析出することが確認された.10℃の試験環境においてTris緩衝溶液の濃度を20℃の試験結果よりも低くすることで,析出率は減少するものの炭酸カルシウムの析出は可能であることが確認された.また,30℃の環境では析出過程の早い段階から炭酸カルシウムが析出することにより炭酸カルシウムの析出量が増加することが確認された. モルタル供試体表面からのイオン移動によってグラウト中のカルシウムイオン量及びpHが増加することが明らかとなった.特に,Tris緩衝溶液を使用していない配合はTris緩衝溶液を使用している配合と比較してモルタル供試体の表面から移動するカルシウムイオン量及びpHが増加することが確認された.また,モルタル供試体を用いた炭酸カルシウムの析出試験の結果より,バイオ補修材を用いて析出された炭酸カルシウムがモルタル表面に付着していないことが確認された.試験管析出試験で最も炭酸カルシウムの析出量が確認された配合において,モルタル供試体の表面に炭酸カルシウムの付着が確認されないことが明らかとなった. コンクリート供試体を用いた補修効果の検討結果より,イースト菌の代謝により炭酸イオンが生成され間隙部において炭酸カルシウムが析出したが、0.5mmと幅の大きい間隙としたため明確な透水量の低減効果は確認されなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究当初懸念課題であった析出量は多いがゲル状(バテライト)の炭酸カルシウムを生成するバイオグラウトについての検討に関して、少量のバテライトの析出が確認される場合があるが、これまでの検討結果から確実にほとんどがカルサイトであるバイオグラウトの配合を見出したため、この懸念課題に関する検討を行う必要がなくなった。従って、予定通り研究が進捗していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に実施した漏水箇所を模擬したコンクリート供試体を用いた補修効果の検討結果より,イースト菌の代謝により炭酸イオンが生成され間隙部において炭酸カルシウムが析出していることが明らかとなった.しかし,本実験では0.5mmと幅の大きい間隙としたため明確な透水量の低減効果は確認されなかった.一方、間隔を狭くしてひび割れを模擬した供試体の実験でも間隙を充填するまでの炭酸カルシウムの析出には至らなかった。これはひび割れが狭い場合にはその空間にとどまるバイオグラウトの量が少ないため、炭酸カルシウムの析出量も少なくなる。従って、実構造物での適用を考えて、所定のひび割れ幅に対して何回バイオグラウトを注入すればよいかなど補修対象個所の空間容積とそれを埋めるために必要な炭酸カルシウムの量の推定およびその炭酸カルシウムを析出させるために必要なグラウト量とその注水方法について検討する予定である。
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