研究課題/領域番号 |
15H04028
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
松本 高志 北海道大学, 工学研究院, 教授 (40301121)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | CFRP / 曲げ部材 / 積層構成 / 画像計測 / 変形機構 / 耐荷機構 |
研究実績の概要 |
本研究では,材料と構造の統合的アプローチにより,CFRP(炭素繊維補強プラスチック)構造部材の変形・耐荷性能の向上を行うことを目的とする.積層材料であるCFRPの材料設計の自由度は大きく,積層構成に応じて構造部材の変形・耐荷挙動も大きく変化する.ゆえにCFRPの部材設計手法の確立においては,積層複合材料の特性と部材中での負荷状態と損傷形態の双方を把握する必要がある.本研究では,材料要素実験,構造部材実験,画像計測,複合材料理論,有限要素解析を用いた統合的なアプローチを深化させて,変形・耐荷挙動の力学的メカニズムの解明をより詳細にし,CFRP構造部材の変形・耐荷性能の向上を行う.本研究は以下の3項目に沿って実施する.(1)離散的材料構造を考慮した解析手法の構築,(2)画像解析による負荷状態・破壊規準値の可視化精度向上,(3)破壊に対してねばり強い材料・部材の検討. 平成28年度においては,(1)~(3)において以下の成果を得た. (1)については,箱形断面曲げ部材の解析手法を構築した.積層の各層の構成則を足し合わせて積層板の構成則を設定し,各層で算出された応力を用いて破壊規準により破損を判定する.これにより損傷に伴う積層板の直方向とせん断方向の非線形性を考慮した解析手法を構築し,実験で観察された挙動を概ね再現する結果を得た. (2)については,画像解析の応力表示による破壊規準値が過大であったことより,ひずみ表示での検討を行い精度の向上を図った.また,ひび割れのように変位の不連続面が生じる場合について,計測点密度と変位・ひずみの平均化の関係についても検討を行った. (3)については,自主製造体制によりシャコの捕脚の外殻構造を生体模倣した積層板を作成し,曲げ実験においてピーク荷重後の軟化挙動が抑えられて残存荷重の保持が得られる結果を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度については,(1)離散的材料構造を考慮した解析手法の構築,(2)画像解析による負荷状態・破壊規準値の可視化精度向上,(3)破壊に対してねばり強い材料・部材の検討,について実施し,以下の成果を得た. (1)については,箱形断面曲げ部材の解析手法を構築した.積層の各層の構成則を足し合わせて積層板の構成則を設定し,各層で算出された応力を用いて破壊規準により破損を判定する.これにより損傷に伴う積層板の直方向とせん断方向の非線形性を考慮した解析手法を構築し,実験で観察された挙動を概ね再現する結果を得た. (2)については,画像解析の応力表示による破壊規準値が過大であったことより,ひずみ表示での検討を行い精度の向上を図った.また,ひび割れのように変位の不連続面が生じる場合について,計測点密度と変位・ひずみの平均化の関係についても検討を行った. (3)については,自主製造体制によりシャコの捕脚の外殻構造を生体模倣した積層板を作成し,曲げ実験においてピーク荷重後の軟化挙動が抑えられて残存荷重の保持が得られる結果を得た. 研究計画で当年度に予定していたことは概ね実施され成果が得られている.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度については,(1)離散的材料構造を考慮した解析手法の構築と(2)画像解析による負荷状態・破壊規準値の可視化精度向上,において,構築された解析手法によりこれまでに実施されたCFRP梁の変形・耐荷・終局挙動の解析を実施する.(1)では,せん断方向の非線形性に関して断面方向の分布を考慮した手法を検討する.(2)では,(1)の非線形性を取り入れた画像解析手法を検討する.(3)破壊に対してねばり強い材料・部材の検討,については,自主製造の試験体により,生体模倣による積層構造の検討をさらに進めて,供試体寸法や荷重条件と合わせて特性を検討する.
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