研究課題/領域番号 |
15H04031
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
斉藤 成彦 山梨大学, 総合研究部, 教授 (00324179)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | コンクリート構造 / 剛体バネモデル / 微視的材料解析 / 巨視的構造解析 |
研究実績の概要 |
コンクリート構造物の維持管理において、非線形構造解析手法は有用な性能評価手法として期待されているが、複雑な材料の劣化過程やコンクリートの時間依存変形等を構造解析手法と組合せた事例は極めて少なく、その妥当性検証は困難な状況にある。そこで本研究では、コンクートの微視的構造に立脚することで多様な材料損傷の定量化を実現する非線形数値解析手法を提案し、コンクリート構造物に対する先進的な構造性能評価システムの構築に資することを目的としている。 本年度は、まず損傷を有するコンクリート試験体の微視的材料解(メソスケール解析)析により、損傷量-力学特性関係の構築を図った。すなわち、微視的材料解析より得られる力学特性(具体的には応力-ひずみ履歴曲線等)と損傷を受けた試験体の実験結果との比較により、実現象の損傷状況に対して材料損傷の定量化を試みた。損傷を有するコンクリート模擬供試体の圧縮破壊実験では、損傷を導入することにより圧縮強度および弾性係数の低下を確認することができ、数値解析結果と同様の傾向となった。これは、実験で導入した損傷の特性と数値解析での損傷のモデル化の相違によるものであり、材料損傷の定量化には更なる検討が必要であることが明らかとなった。本検討結果については、学術誌へ論文投稿を行った。 一方、巨視的構造解析については、実際に供用されているプレストレストコンクリート桁を対象に、PC鋼材の破断が部材の耐荷挙動に及ぼす影響について検討を行うため、3次元解析モデルの構築を行った。すべての鋼材を離散的に扱い、比較的自由度の高い解析モデルを構築することができ、PC鋼材の局所的な損傷がマクロな耐荷挙動に大きな影響を及ぼすことが明らかとなった。今後は本検討結果を充実させることで、学術誌への論文投稿を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
微視的構造解析については、損傷を有するコンクリート供試体の模擬実験を実施し、メソスケール解析結果との比較検討を通して、損傷の定量化への道筋をつけることができた。模擬実験結果は解析と同様の傾向を示しているが、損傷の導入方法によって実験結果にばらつきが生じるとともに、損傷と特性値との変動に影響を及ぼすため、さらなる検討を加える予定である。 巨視的構造解析については、実構造物を3次元でモデル化するため自由度が大きく、モデルの作成および解析実行に時間を要しているものの、局所的な損傷が耐荷挙動に及ぼす影響については、興味深い検討結果が得られている状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
微視的構造解析については、引き続き材料損傷の定量化に努めるとともに、凍害やアルカリシリカ反応などの実際の材料劣化の生じたコンクリートに対する試験結果との比較検討を実施し、損傷量と力学特性値との関係について、より工学的に有用な結果を得ることを目指す。 巨視的構造解析については、実構造物の3次元フルモデルに対し、水分および塩分を考慮した物質移動解析と鉄筋の腐食モデルを導入することで、材料劣化解析と巨視的構造解析との統合を図る予定である。
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