研究課題/領域番号 |
15H04034
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
野田 稔 徳島大学, 大学院理工学研究部, 准教授 (30283972)
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研究分担者 |
長尾 文明 徳島大学, 大学院理工学研究部, 教授 (40172506)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 竜巻状流れ / 移動効果 / LES / 飛散物 / 漏斗雲 / 風災害 |
研究実績の概要 |
本研究課題は,深刻な被害をもたらす竜巻への対策が急がれていることを鑑みて,1.移動床付マルチファン・マルチベーン式竜巻シミュレータの流れ場の分析と制御則の確立,2.竜巻状流れ場内の飛散物運動解析によるデブリクラウド生成手法の確立,3.竜巻状流れ場における漏斗雲の生成手法の確立,を主なテーマとして取り組み,実験装置の改良と生成される移動状態の竜巻状旋回上昇流のPIV計測試験,数値流体解析による各種竜巻状流れ場の生成と飛散物運動解析および漏斗雲の生成に関する検討を実施した。本年度に得られた成果を以下に示す。 移動床付竜巻シミュレータは,制御ソフトを完成させ,任意の条件で稼働できるようになり,収束層高さおよび上昇流孔半径の変更機構を電動化することで,迅速かつ正確に実験条件を変更できるようにした。同時に,3D-PIV計測によって,移動床が稼働した状態の竜巻状旋回上昇流について流れ場を計測し,渦軸が傾斜する移動状態特有の流れ場の形成を確認した。加えて,従来の竜巻シミュレータでは,1セル型,2セル型の2種類しか生成できなかったのに対して,本竜巻シミュレータでは定常的な生成が難しいマルチセル型の竜巻状旋回上昇流が生成できることが明らかになり,より高性能な竜巻シミュレータが実現できていることを確認した。 一方で,水平シア場において生成される竜巻状旋回上昇流の数値流体解析による再現計算では,境界条件に改良を加えることで1セルからマルチセルまでの竜巻状旋回上昇流を再現できるようになった。それに伴って,飛散物の運動解析を実施した結果,飛散物の飛行特性に対して流れ場のスケールが強く影響することや,飛散物の飛行速度や飛行範囲が統計的に表現可能であることを確認した。併せて,漏斗雲の生成についても検討し,1セルからマルチセルまでに対応する漏斗雲の生成面の計算が可能であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度やり残した移動床付マルチファン・マルチベーン式竜巻シミュレータの制御ソフトウェアをVisualBASICを使って完成させ,任意の境界条件を自由に設定して竜巻シミュレータを運転できるようになった。さらに,様々な境界条件に対して3D-PIV計測試験を実施し,従来の計画で目標としていた移動移動状態の竜巻状旋回上昇流が狙い通り再現できるようになったことを確認した。加えて,マルチセル型の竜巻状旋回上昇流が定常的に生成可能であることが明らかとなり,装置の大幅な性能向上が実現した。 一方で,数値流体解析による竜巻状流れ場の生成において,これまで生成が難しかったマルチセル型の竜巻状旋回上昇流が再現できるようになり,飛散物の飛行解析および漏斗雲の生成面の解析にも流れ場の条件に幅が持たせられるようになった。飛散物の飛行解析については,様々な空力パラメータを持った飛散物について飛行特性を求めることができるようになった一方で,漏斗雲の生成面の解析についてもマルチセル型の竜巻状旋回上昇流に対する漏斗雲を再現することもできることが確認でき,順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
移動床付マルチファン・マルチベーン竜巻シミュレータについては,移動状態の竜巻状流れ場の再現に加えて,より幅広い種類の竜巻状流れ場が生成できるようになり,計画以上の機能が備わったことから,平成29年度は,本装置によって生成される竜巻状旋回上昇流について3D-PIV計測を通じて,詳細な3次元空間構造を明らかにすることに取り組んでいく。 また,並行して,数値流体解析によって様々な条件に対する飛散物の飛行解析および漏斗雲生成面の解析を進め,竜巻特性値同定手法の確立を目指して,時々刻々の飛散物および漏斗雲による竜巻の見え方と流れ場との関係のデータベースの構築に取り組む。
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