研究課題/領域番号 |
15H04038
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
鈴木 素之 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (00304494)
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研究分担者 |
土田 孝 広島大学, 工学研究科, 教授 (10344318)
楮原 京子 山口大学, 教育学部, 准教授 (10510232)
進士 正人 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (40335766)
後藤 聡 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (80303395)
森下 徹 山口大学, 教育学部, 教授 (90263748)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 土石流 / 災害リスク / 年代測定 / 発生頻度 |
研究実績の概要 |
平成29年度の研究実績としては、前年度に引き続き、大規模な土石流災害が発生した広島市安佐南区および安佐北区、長野県木曽郡南木曽町における複数の土石流発生渓流の側岸、扇状地末端で現地調査を行い、土石流堆積物等に含まれる炭化物に対して放射性炭素年代測定を実施し、その結果と歴史記録との対比から土石流発生時期の確度を検討したうえで、各地区の土石流発生年表にデータを追加したことである。以上の結果、風化花崗岩が分布する地域の土石流発生間隔は、広島地域で200~400年となり、既に判明している防府地域では100 年~150 年であることと比べて、土石流発生サイクルがいくぶん違うことが明らかになった。この原因として、豪雨の再現期間だけでなく、流域面積や地形条件、地質による風化速度の違いが土石流発生頻度に影響したと考えている。これより、防府地域と同様に広島地域の土石流発生年表もまた完成のレベルに達した。他方、南木曽町ではデータがまだ少なく土石流発生間隔を推定するまでには至らなかった。『南木曽町誌』には1904年から1979年までに19件もの豪雨記録が残されており、そのうち5件は土石流に関する記述であったことから、土石流が繰り返し発生していた地域であるので、継続的に調査を進める必要がある。その他、土石流堆積物に対する土質試験を行い、粒度特性による土石流の同定について検討した。また、広島市西区と佐伯区の既往活断層トレンチ調査の調査資料を入手し、土石流堆積物の地質年代試料の対比を行った。これより、活断層調査資料には土石流堆積物に関する記述が含まれているケースがあり、過去の土砂災害の評価資料として活用できる可能性があることが分かった。データの蓄積が進んできたので、花崗岩地帯の中長期的な災害発生時期の予測と発生確率の算定に利用できると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の研究実施計画であげていた項目として、(1)平成21年7月防府災害発生エリアに対しては、DEM作成と地形解析は既に完了しており、平成26年8月広島災害発生エリアについてはLPデータを入手し、平成30年度に行う解析の準備ができた。(2)土石流発生データを表示する地盤情報システムを導入し、その仕様・機能等を検証し、階層的に表示できる各データの整備を行った。(3)防府災害、広島災害に対応した土石流災害発生年表はほぼ完成レベルに達した。長野県木曽郡南木曽町の災害に関しては、土石流発生箇所の追加調査を行い、土石流堆積物の年代測定と堆積土砂の土質特性の解析を行った。また、比較として、地質が異なる山口・島根豪雨災害の発生域に対しても災害年表を作成した。以上のことから、平成29年度の実施項目はいずれも着手し、その結果を取得したことから、本研究課題は概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、以下の3点について重点的に実施する予定である。 (1)14C年代測定結果と災害アーカイブに基づく土石流災害発生年表の完成:長野県木曽郡南木曽町に対して重点的に土石流災害履歴調査(14C年代測定、資料調査、土質分析等)を実施する。また、防府市、広島市安佐南区、安佐北区等に対しても補完的な調査を実施する。最終的に各地の被災エリアを対象とした『土石流災害発生年表』を完成させる。 (2)土石流発生エリアの地形解析:災害発生後の数値標高モデル(DEM)に対して地形解析を行い、崩壊源頭部の地形特性(幅・長さ・勾配など)、土石流の流下経路、規模や到達範囲を検討する。また、発生前のDEMが利用可能であれば、崩壊箇所やそれに隣接する箇所に対して崩壊前後の微地形特性の違いを検討する。さらに、現地調査結果をふまえて過去最大レベルの土石流の到達範囲を解明する。 (3)災害リスクマップの作成:地理情報システム(GIS)を用いて、過去に起きた土石流の源頭部の位置、発生年代、規模、到達範囲を表示し、今後想定される被災リスクの程度と範囲を図示するシステム案を検討する。また、解析画面上で過去の土石流発生を時間的・空間的に把握でき、県が公表している土砂災害危険箇所や市町が公開している土砂災害ハザードマップとともに表示できるシステムの仕様を検討する。
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