本研究の目的は、人口減少により経済規模も一人当たり所得も減少するという議論が多いことに対し、それが誤りであることをデータにより示し、地域創生事業のあり方について検討することにある。本年度取り組んだ3つの課題とその成果は以下の通りである。 ①全国都道府県、市町村、及び生活圏の2013~2025年の人口統計と産業統計の分析と地域の類型化については、人口の増減、総生産額の増減、それに対する産業分類別生産額の寄与度、一人当たり所得の関連性の分析から地域の類型化を行った。その結果の一例を示すと、データの揃う162生活圏中で、一人当たり経済規模の減少しているのは島しょ部4地域を含む9生活圏のみであり、3小都市と4つの島であった。人口も生産額も上昇しているのは50万人以上都市など20生活圏であり、多くは人口が減少しても所得は向上している。 ②地域類型と地域創生策との関係については、若年層の東京への流出は中枢都市から、中枢都市への流出は県庁所在都市からが多いことから、東京への一極集中、地方ブロックでの中枢都市への一極集中、都県での県庁所在都市への一極集中への対策が、相互に矛盾するという課題を明らかにした。また、6道県について、地元大学研究者と県庁に上記のデータを示し、その変動原因と地域創生策についての検討を依頼し、回答を得た。それぞれの地域での年齢別人口変動と経済データの変動についての現地での事情が判明した。若年層の流出防止を目的とした地域創生策には課題が多い。 ③地域活性化策の地域単位については、県内中核都市、生活圏中心都市と県内地方部、地方中枢都市、3大都市の相互の移動状況からの地域類型化を行なった。各中心都市の生活サービスの提供可能性が大都市への人口流出に影響していることが明らかになっている。 地域類型と地域創生策について得た知見については最終報告書に示したい。
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