研究実績の概要 |
経済のグローバル化が求められる今日においては,物流効率化に向けた適切な物流拠点の配置,機能の強化,物流ネットワークの構築が必要不可欠であるとともに,貨物の動きを正確に捉える必要がある.我が国では,純流動データおよび総流動データといった国内貨物流動を対象とした統計調査があるが,これら既存の調査では流通・配送センター等の物流拠点を経由する貨物の動きを把握することができない.そこで,本研究課題では,オランダで開発された物流モデル(Davydenko, I. Y., Tavasszy, L. A. and de Blois, C. J. : Modeling interregional freight flow by distribution systems, 13th WCTR, 2013)のフレームを国内に適用し,物流施設を経由する都市間物流モデルの構築および,施設を経由する貨物量の推計を行った. その結果,有効データサンプル数の多い輸送機関・品類では高い推計精度が確認でき,総貨物量の約4割が物流拠点を経由して運搬されていることが確認できた.なお,本研究でのモデルの推計精度をみると,全輸送機関・総貨物の決定係数が0.74~0.76であったのに対して,オランダの検討では決定係数が0.74とほぼ同じ精度であったことを確認した.また,オランダで検討されたモデルでは,説明変数を所要時間のみとして貨物量が推計されているが,ハブ・アンド・スポーク型の物流に代表される近年の輸送形態をみると,大型配送拠点の集積メカニズムが機能していると考えられ,貨物の輸送形態は必ずしも所要時間のみが起因しているわけではないと考えられる.そこで,集積メカニズムの代替として地域の経済規模(GRP)を考慮したモデルへと改良したところ,貨物量の推計精度が向上することなどが明らかとなった.
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