研究実績の概要 |
前年度までの検討においてグライコブロッティング法を用いた新水処理材を試作し、実水道原水と下水処理プロセス(膜分離活性汚泥法、MBR)より採取した上澄み液を対象として除去性を検討した。本研究で開発をしようとしている処理方法により良好な除去が見込める多糖と、除去が見込めない多糖が存在することが示唆されている。用排水処理の有機物分析において多用されるLC-OCDでは多糖がバイオポリマー画分として一括検出される。本年度はLC-OCD分析の改良を行い、バイオポリマー画分をより細分化して分画することを試みるとともに、膜ファウリング発生に重要となるバイオポリマー画分について検討した。通常のLC-OCD分析では、バイオポリマーは分子量10,000Da以上の成分として一括検出されるが、本年度検討した改良LC-OCD分析ではバイオポリマー画分が非常に幅広い分子量を有する成分から構成されることが明らかになった。すなわち、バイオポリマー画分の中には分子量が1,000,000Daを超える超高分子量画分が存在する一方で、分子量10,000程度の画分も存在し、これらは水処理過程において異なる挙動を示すと考えられる。MF膜のファウリング発生に重要な関与をするのは分子量>1,000,000Daの超高分子量画分であることが示された。この超高分子量バイオポリマーの通常の水処理プロセスによる除去性は低く、膜ファウリング制御の困難さが示された。アルミニウム塩を用いた凝集では超高分子量バイオポリマーが一部除去されるが、イオン交換処理による除去はほとんど見込めないことが明らかになった。
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