研究実績の概要 |
本研究は、世界初のスタック化となる多層型の人工湿地-微生物燃料電池を確立することを目指し、本年度は、人工湿地-微生物燃料電池の絶縁ろ材厚の影響を検討するとともにプロトタイプの2層スタック化人工湿地-微生物燃料電池を試作し、その性能を評価した。ろ床表層のカーボンフェルトをカソード、ろ床中間部のリサイクルガラスを絶縁ろ材、ろ床内部のカーボンフェルトをアノードとした人工湿地-微生物燃料電池の絶縁ろ材の厚さを変えた実験(ろ材厚1,4,7cmの3条件)により、ろ材厚は厚い方が良好な発電性能が得られることが明らかとなった。ろ材厚が薄いとアノードが嫌気的環境になりにくく、嫌気環境で生育・増殖する電流生産微生物に適した環境とならないことが示唆された。ろ材厚7cmの条件で得られた電力密度積算値および発電効率は、それぞれ7010mWh/m²および2337mWh/m²であった。しかし、ろ材厚4cmと7cmの電力密度積算値の差は8%に過ぎず、燃料である合成排水の投入回数1回あたりの発電効率で比較しても同様の僅かな差であった。ろ材厚が薄いほど人工湿地-微生物燃料電池のスタック化が容易になること、ろ材厚7cmと4cmの発電性能の差は僅かであることより、人工湿地-微生物燃料電池のスタック化には、ろ材厚は4cmの方が有効であると考えられた。この結果を参考として、絶縁ろ材厚を5cmとして試作した2層スタック化人工湿地-微生物燃料電池を試作し、その性能を調べたところ、得られた出力5370mW/m²は、1層の人工湿地-微生物燃料電池の合計出力である5700mW/m²(3220+2480=5700)とほぼ一致した。この結果により、スタック化による電圧降下はほぼ無かったことが確認できた。本研究は、人工湿地-微生物燃料電池のスタック化の事例として世界で初めての試みである。
|