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2016 年度 実績報告書

ナノ・分子スケールのセメント水和物構造変化に基づくコンクリート構造の耐久性力学

研究課題

研究課題/領域番号 15H04077
研究機関名古屋大学

研究代表者

丸山 一平  名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (40363030)

研究分担者 寺本 篤史  広島大学, 工学研究院, 助教 (30735254)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード乾燥 / 微細ひび割れ / C-S-H / ナノスケールの変質 / 不可逆変化
研究実績の概要

本研究では、乾燥によって生ずるC-S-Hの変質に関する定量評価を実施するとともに、それによって変化する物性変化が鉄筋コンクリート構造にどのような変化を生じさせるかを評価することを目的としている。
現在まで、2体の鉄筋コンクリート壁試験体、2体の梁試験体を作成し、乾燥前の状態の載荷実験を行っている。2017年度には、同時期に作成した試験体の乾燥後の載荷試験を行う予定である。
その他、乾燥によって生ずるセメントペーストの非可逆の変質については、X線小角散乱による評価を行うとともに、新しいモデルの提案を検討した。X線小角散乱による測定では,USAXS,SAXS,WAXS領域のデータを取得して連結し,Disc-FractalモデルによってフィッティングすることでC-S-Hの凝集構造体の乾燥時の変化について,はじめて世界で定量した。併せて,ディスクより小さい領域においては,ギニエプロットの結果から,一次元的に体積変化を生じることを世界で初めて示した。
また、その変質速度を予測するために必要な水分移動モデルを高度化するために必要な、水分移動実験データの取得を行った。相対湿度をポテンシャルとした時にはボルツマン分布にならず、水分移動においてC-S-Hの変質速度を考慮しなくてはいけないことを明らかにした。1H-NMR Relaxometryを用いてC-S-Hの変質について拘束される水の分布で評価する手法について、現在、CPMG測定の間隔によって測定結果が変化することを明らかにし、データの信頼性評価手法について検討を進めている。
セメントペーストの物性変化がコンクリート物性に及ぼす影響を定量的に把握するために,乾燥によって骨材周囲に損傷が入り、コンクリートとしては小さいひび割れを有しながら物性が変化する様子を評価できる、骨材とモルタルの二要素による剛体バネモデルによる詳細なモデルを開発した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

実験は順調に進んでおり、今年度、乾燥を生じた鉄筋コンクリート部材の載荷試験を行うことで、構造的に評価する上での重要な課題についての理解が進む予定である。加えて、セメントペーストのナノスケールの変質については、X線小角散乱によって乾燥時にC-S-Hの層間が変化していることを初めて定量的に示すことに成功した。これに基づき、C-S-Hの新しい構造モデルをGartner博士(Imperial collage of London)ならびにChen博士(LafargeHolcim)とC-S-Hに関する新しいモデルを提案することに成功した。これは、C-S-Hの生成とともに生じると考えられるゲル水は、Ca2+イオンに配位する水分子によって生じるというもので、既往のデータについても定量的に整合する結果が得られている。

今後の研究の推進方策

2017年度は以下の項目を実施し、ナノスケールの変質の定量、その変質が物性に及ぼす影響、鉄筋コンクリート構造物における乾燥の影響、について明らかにする。1)乾燥後の壁試験体ならびに梁試験体の載荷実験を行う。いずれも1年間の乾燥を生じさせたものである。2)1H-NMR Relaxometryを用いてC-S-Hの乾燥時の変質についての知見を深める。3)セメントペーストにおける外部水和生成物量が物性変化に及ぼす影響について、セメントペーストの乾燥収縮試験を行うことによって明らかにする。4)セメントペーストの変質、ペーストと骨材の相互作用を評価可能な剛体バネモデルの正確度を向上し、任意の乾燥条件下のコンクリート物性予測手法を確立する。5)4)で得られた知見を拡大し、鉄筋コンクリート部材性能評価が可能な数値解析手法を開発し、実験で得られた部材性能試験とペースト実験との関係について評価する。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 6件) 学会発表 (4件)

  • [国際共同研究] Imperial college of London/Surrey University(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      Imperial college of London/Surrey University
  • [雑誌論文] Microstructural changes in white Portland cement paste under the first drying process evaluated by WAXS, SAXS, and USAXS2017

    • 著者名/発表者名
      Maruyama Ippei、Sakamoto Naoki、Matsui Kunio、Igarashi Go
    • 雑誌名

      Cement and Concrete Research

      巻: 91 ページ: 24~32

    • DOI

      10.1016/j.cemconres.2016.10.002

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Multi-scale Review for Possible Mechanisms of Natural Frequency Change of Reinforced Concrete Structures under an Ordinary Drying Condition2016

    • 著者名/発表者名
      I. Maruyama
    • 雑誌名

      Journal of Advanced Concrete Technology

      巻: 14 ページ: 691-705

    • DOI

      http://doi.org/10.3151/jact.14.691

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Action Mechanisms of Shrinkage Reducing Admixture in Hardened Cement Paste2016

    • 著者名/発表者名
      I. Maruyama, K. Beppu, R. Kurihara, A. Furuta
    • 雑誌名

      Journal of Advanced Concrete Technology

      巻: 14 ページ: 311-323

    • DOI

      http://doi.org/10.3151/jact.14.311

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Impact of Aggregate Properties on the Development of Shrinkage-Induced Cracking in Concrete under Restraint Conditions2016

    • 著者名/発表者名
      I. Maruyama, H. Sasano, M. Lin
    • 雑誌名

      Cement and Concrete Research

      巻: 85 ページ: 82-101

    • DOI

      http://doi.org/10.1016/j.cemconres.2016.04.004

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Impact of demolding age and mineral composition of cement on drying shrinkage of cement paste2016

    • 著者名/発表者名
      T. Haji, S. Kotera, R. Kurihara, I. Maruyama
    • 雑誌名

      Proceedings of the Japan Concrete Institute

      巻: 38(1) ページ: 45-50

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Numerical simulation of properties of dried concrete considering interfacial transition zone2016

    • 著者名/発表者名
      K. Ogawa, Y. Yamamoto, I. Maruyama
    • 雑誌名

      Proceedings of the Japan Concrete Institute

      巻: 38(1) ページ: 645-670

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] 湿度変化による乾燥を受けたコンクリートの透気性に関する検討2016

    • 著者名/発表者名
      小寺周, 張仁淇, 丸山一平
    • 雑誌名

      コンクリート工学年次論文集

      巻: 38(1) ページ: 63-68

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] 合成エトリンガイトの体積変化メカニズムに関する基礎的研究2016

    • 著者名/発表者名
      93.赤羽根駿之介, 五十嵐豪, 西脇智哉, 丸山一平
    • 雑誌名

      コンクリート工学年次論文集

      巻: 38(1) ページ: 579-584

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Experimental study on relative humidity change and its distribution in cylindrical concrete under heating and one-sided dry2016

    • 著者名/発表者名
      小寺周,丸山一平,張仁淇
    • 学会等名
      日本建築学会大会
    • 発表場所
      福岡大学,福岡市
    • 年月日
      2016-08-24 – 2016-08-26
  • [学会発表] Impact of two types of calcium silicate hydrate on drying shrinkage of Portland cement paste2016

    • 著者名/発表者名
      櫨辰也, 丸山一平
    • 学会等名
      日本建築学会大会
    • 発表場所
      福岡大学,福岡市
    • 年月日
      2016-08-24 – 2016-08-26
  • [学会発表] セメントペーストの微分熱重量測定によるアモルファス量の推定に関する基礎研究2016

    • 著者名/発表者名
      307.杉本裕紀,櫨辰也,栗原諒,丸山一平
    • 学会等名
      日本建築学会大会
    • 発表場所
      福岡大学,福岡市
    • 年月日
      2016-08-24 – 2016-08-26
  • [学会発表] Numerical analysis of properties of dried concrete of considering interfacial  transition zone2016

    • 著者名/発表者名
      小川浩太,丸山一平
    • 学会等名
      日本建築学会大会
    • 発表場所
      福岡
    • 年月日
      2016-08-24 – 2016-08-26

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公開日: 2018-01-16   更新日: 2022-08-26  

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