研究課題/領域番号 |
15H04084
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研究機関 | 鹿島建設株式会社(技術研究所) |
研究代表者 |
閑田 徹志 鹿島建設株式会社(技術研究所), 建築生産グループ, グループ長 (40416780)
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研究分担者 |
溝渕 利明 法政大学, デザイン工学部, 教授 (60339504)
濱 幸雄 室蘭工業大学, 工学研究科, 教授 (70238054)
小島 正朗 株式会社竹中工務店 技術研究所, 建設材料部, 主任研究員 (80507244)
佐川 孝広 前橋工科大学, 工学部, 准教授 (90621045)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 高炉スラグ / マスコンクリート / 温度 / 収縮 / 水和解析 / 線膨張係数 |
研究実績の概要 |
■初期水和機構の解明と温度ひび割れ抵抗性向上に資する材料構成の最適化 本年度は、高炉C種セメント(BC)の初期水和機構を詳細に検討し、セメントの材料構成が異なる場合に、温度ひび割れ抵抗性に与える影響を明らかにした。温度ひずみおよび温度応力を支配する見掛けの線膨張係数は、高炉B種セメント(BB)コンクリートに比べ、炭酸カルシウムや石膏などの少量混合成分を増量することで、大幅に小さくできることを定量的に明らかとした。また、線膨張係数の時間変化についても検討し、前記最適化により、温度応力が急増する温度下降の初期に線膨張係数の増大を遅延させることで応力緩和が可能であることが分かった。さらに,BCコンクリートに初期高温履歴を与え、温度履歴の時系列に沿ってX線回折法(XRD)に基づくリートベルト解析を用い水和物の定量分析を行い、特に温度履歴ピーク後において,自己収縮を増大させ見掛けの線膨張係数を増大させるモノサルフェートの生成を抑制する材料構成を見出し、ひび割れ抵抗性をさらに高めたBCコンクリートを提案した。 以上の実験結果からBCセメントの材料構成の最適化により、線膨張係数と温度変化の積の時間累加として表される温度ひずみを抑制し、BCコンクリートの温度ひび割れ抵抗性を大幅に向上させる見通しを得た。 ■構造体コンクリートの確保 さらに,強度発現についても追加的に検討し,構造物に使用した場合の構造体コンクリート強度を確保するための補正値についても実験的に明らかとし,実適用に際しての課題を解決した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画に基づき成果を創出しており,温度ひび割れを抑制するため最適化した材料構成を提案し,温度ひび割れに関する諸物性を把握した。また,BCコンクリートの実適用に際して重要な課題である構造体コンクリート強度の確保についても実験的に把握し,高い信頼性で同強度を確保するための補正値を提案した。これらは本研究の最終目標につながる重要な知見である。
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今後の研究の推進方策 |
■温度ひび割れ制御設計法の構築とその妥当性検証 2016年度までの成果に基づき、温度ひび割れ制御設計法を構築する。設計法は、クリープ係数、見掛けの線膨張係数をはじめとするBCコンクリートの温度応力解析のための構成則を組み込んだ非線形FEMを基礎とする。 提案する設計法の精度を明らかにするため、実大部材による妥当性検証実験を実施する。検証実験では、実際のマス部材の断面内の温度に加え無拘束ひずみと実ひずみ(拘束された状態のひずみ)を計測する。併せて、既存材料と比較するため、既存コンクリートおよびBCコンクリートで同一断面の模擬部材を製作し同様に計測を行って、その結果からひび割れ抵抗性の定量比較を行う。さらに、計測されたデータをもとに、提案する設計法を適用し、温度応力解析に基づく応力強度比ηを算定する。さらには、ηと実際のひび割れ状況の比較から、設計の妥当性を明らかにすることを目指す。
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