研究課題/領域番号 |
15H04091
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研究機関 | 国立保健医療科学院 |
研究代表者 |
大澤 元毅 国立保健医療科学院, 生活環境研究部, 主任研究官 (20356009)
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研究分担者 |
金 勲 国立保健医療科学院, 生活環境研究部, 主任研究官 (00454033)
鍵 直樹 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (20345383)
長谷川 兼一 秋田県立大学, システム科学技術学部, 教授 (50293494)
柳 宇 工学院大学, 建築学部, 教授 (50370945)
東 賢一 近畿大学, 医学部, 准教授 (80469246)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 室内空気質 / 水害 / ダンプ / 住宅 |
研究実績の概要 |
平成26年8月に水害の被害のあった福山市において,浸水被害のあった住宅及び対照として被害のなかった付近住宅も含め,居住者への健康に関するアンケートと室内環境の実測調査を継続的に平成27年夏期及び秋期についても行い,縦断的なデータの蓄積を行った。被災後1年経っても,室内及び床下の浮遊微生物濃度及び一部の化学物質濃度が高くなっていることを確認し,室内及び床下の温湿度,基礎コンクリート及び木材の含水の状況との関連について,検討を行った。 また,室内化学物質上昇の原因を検討するため,木材の含水率を制御して,小形チャンバー法を用いた化学物質発生試験を行った。対象の木材として,スギ材及びフローリング材を選定し,チャンバー内の湿度の制御及び浸水を想定した材料の水の浸漬により,木材の含水率の制御を行った。材料の含水率の増加,及び木材を浸漬することで,アセトアルデヒド及びテルペン類の発生量の増加が認められ,水害被害による材料の含水率の増加が室内化学物質濃度の上昇する可能性を示した。 更に,建物浸水による室内湿度環境のメカニズム解明のため,基礎からの湿気伝搬の検討を行った。基礎的な検討を目的に,浸水した基礎からの湿気の放出を詳細に解明するため,含水させたコンクリート試験体による放湿実験を行い,その特性の検討を行った。また実モデル住宅に適用するために,基礎コンクリートからの放湿状況を再現することで数値解析による定量的な評価を可能とする基礎資料となるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究初年度ではあるものの,前年度の科学研究費の研究班により獲得した浸水地区での実測調査対象住宅において,被災後1年後の状況についても,検討する機会に恵まれ,住民の健康状態及び室内環境の物理データの蓄積を行うことができた。 更に上記の基礎資料から,室内浮遊微生物,化学物質,及び湿気環境について,浸水による影響を検討するため,今年度は特に化学物質及びコンクリートからの湿気の放出について,試験を行った。特に化学物質に関しては,木質材料の含水率を制御しながら,小形チャンバー法を用いた化学物質発生量試験を行うことで,浸水による木材の含水の状況と特定の化学物質の発生のメカニズムの一端を解明することができた。
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今後の研究の推進方策 |
浸水被害住宅における,室内環境及び居住者の健康状況については,調査対象の確保が難しくなることが予想されるため,新たな協力者の開拓を図りつつ,災害の状況を見極め,調査を行う。 浸水による室内環境に与える影響については,特に材料の含水の状況と微生物の繁殖について,重点的に行う。床下及び室内の材料が浸水により,木材,コンクリート及び断熱材の含水,乾燥による微生物の生育状況等について検討を行う。 更に,床下の浸水・乾燥過程(メカニズム)の定式化を試みるため,コンクリートからの湿気の放出速度について実験的に求めるとともに,吸放湿(含水・乾燥)過程が床下環境に及ぼす影響を実験と数値計算等を用いて検討を行う。これにより,経時的な床下及び室内における湿度環境の予測を行うことが可能となる。
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