研究課題
近年、地球温暖化を契機に想定を越えた台風や集中豪雨が洪水や建物の浸水を招き、住まいの安全を脅かす事態が日本各地で頻発している。一度浸水した住宅は、室内及び床下に湿気をため込み(ダンプ)、室内の環境悪化に伴う居住者の健康影響が懸念される。更に、近年の住まいでは省エネ性・居住性や耐震性を求めた工法・設備・建材技術の革新で急速に変貌しているが、浸水等の非常時には却って減災・復旧の妨げとなる懸念もあることを申請者らは明らかにしている 。しかしながら、設計時・被災時における対策・復旧に関する情報が不足していることがある。本研究は、水害対策に係る技術動向、浸水後に生じる居住環境上の被害と居住者の健康影響、被害メカニズムについて、住宅の中期的な追跡調査と実験研究を行うことで、住宅のダンプ被害の把握と合理的な対策・復旧方法の提案を行うことを目的とする。本年度は,浸水住宅において検出された2-エチル-1-ヘキサノール(2E1H)を中心に検討を行った。この物質は,臭いに特徴があり,コンクリートなどの下地に施工した塩ビ建材や接着剤に含まれる可塑剤のフタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)がコンクリートに含まれるアルカリ水溶液によって加水分解されることが示されている。しかし,この様な施工が行われていない住宅においても,高濃度で検出されることがあることから,建材の含水による2E1Hの発生について検討を行った。建材発生実験として,床材及び接着剤を対象に,材料に含水及び環境湿度を増加させることにより、下地などからの水分や空気中の水蒸気により、建材の吸水率が上昇し、塩ビ建材や接着剤の2E1H発生量が増加することを確認した。このことから,浸水後の住宅においても,材料の含水による臭い成分である2E1Hが多く発生したものと考えられる。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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