研究課題/領域番号 |
15H04100
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
孔 相権 山口大学, 大学院創成科学研究科, 講師 (80514231)
|
研究分担者 |
山田 圭二郎 金沢工業大学, 建築学部, 准教授 (00303850)
三谷 智子 岐阜医療科学大学, 看護学部, 教授 (30378757)
村上 由希 同志社大学, 研究開発推進機構, 助教 (50580106)
三浦 研 京都大学, 工学研究科, 教授 (70311743)
今村 行雄 国立研究開発法人理化学研究所, 生命システム研究センター, 研究員 (90447954)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 食事提供プロセス / 脳血流 / 表情 / 空間評価 / 施設計画 |
研究実績の概要 |
昨年度(平成28年度)の研究実績報告書でも記載したが、倫理面での研究阻害要因は解消し特別養護老人ホームSの調査協力を得られたことより、要介護高齢者を調査対象として視覚刺激をコントロールして脳血流と表情の測定を行った。 具体的には、特別養護老人ホーム(以下:特養)で一般的なワゴンを利用した給食方式の食事提供動画と特養内のキッチンで同じ料理を調理した食事提供動画、両者を要介護高齢者が見た時の脳活動と表情を測定し、両者のデータを比較することにより、異なる食事提供プロセスが要介護高齢者にどのような影響を及ぼすか検証した。 当初の研究計画では、実験室環境ではなく、要介護高齢者が居住する日常生活場面で脳血流と表情を測定する予定であったが、特養側から要介護高齢者の身体的負担が大きくなり過ぎるとの意見があったため、特養内の静養室を実験室として整備し、特養内で脳血流と表情測定を行った。平成29年度の被験者数は11名(脳血流11名、表情6名)となっている。表情の被験者が少ないのは、表情を測定するためにビデオカメラで動画を撮影する必要があったのだが、実験中にビデオ撮影を嫌がる要介護高齢者がおり、同意が得られなかった要介護高齢者のビデオ撮影を行わなかったためである。 実験結果を分析すると脳の特定領域(眼窩前頭皮質)において動画の差異により、統計的に有意に脳血流量の差異が認められること、同様に表情評価においても調理あり動画の方が調理なし動画よりも統計的に有意に「happiness」の表情が増加することが明らかになりつつあるが、被験者数が少ないため、今後も調査を継続し被験者数を増やすことが重要となる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査対象施設が当初予定していた特別養護老人ホームHから特別養護老人ホームSに変更になるなど予定通り研究が進まなかった点などもあるが、要介護高齢者を対象に脳血流と表情測定を実施できたこと、また研究実績概要でも記載したが、被験者数は少ないものの脳の特定領域において動画の差異により、統計的に有意に脳血流量の差異が認められること、同様に表情評価においても調理あり動画の方が調理なし動画よりも統計的に有意に「happiness」の表情が増加することが明らかになりつつあることより、研究の遅れは概ね取り戻せたと判断できるため(2)おおむね順調に進展していると自己評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
繰り返しになるが、研究実績の概要で記載した「脳の特定領域において動画の差異により、統計的に有意に脳血流量の差異が認められること、同様に表情評価においても調理あり動画の方が調理なし動画よりも統計的に有意に「happiness」の表情が増加すること」という知見は、「重度要介護高齢者は加齢による身体機能の衰えにより施設環境を活用できないが、整備され改善された施設環境を肯定的に評価している」という研究計画作成当初に研究班が設定した仮説が概ね妥当であったことを示唆する極めて重要な知見であると考える。しかし、要介護高齢者の被験者数は11名と少数であること、健常者と要介護高齢者の差異の有無など検証すべき課題も残っている。要介護高齢者の被験者数を増やし、健常者を被験者とした実験を行うことが次年度以降の本研究の課題となる。
|