2018年度は、これまでの研究の最終段階であり、全体の成果の取りまとめを行った。藤沢市の鵠沼海岸、片瀬江ノ島海岸の海水浴客を対象とした避難場所選択行動アンケート、横浜市内でおこなったパソコンを用いた避難施設選択アンケート、宮崎市、高知市、和歌山市、静岡市、浜松市などの南海トラフ地震を想定した地域の浸水予想地域の居住者に対するオンラインによる避難行動アンケートの結果、さらに、東日本大震災における実際の避難行動データを用いた避難選択モデル推定の結果、それぞれの比較分析を行った。 共通する点は、避難先となる施設の大きさ、高さ、海からの方向、そして避難施設までの距離が、避難行動に大きく影響するということである。もっとも強く影響するのは距離であり、最寄りの施設までの距離が一定以上になると、避難せずに自宅に留まる選択がもっとも卓越するようになる場合もある。また、地理的な避難者の現在位置、避難者の住む住宅の建て方や、居住階、建物の階数、地形的な特徴、年齢や性別、世帯構成などの避難者の個人的な属性も大きな影響を与えることが確認でき、特に、戸建て住宅に住む人は、マンションの居住者よりも避難行動をしない傾向にある。自宅への愛着の高さが逆に避難行動を抑制することにつながっているとも考えられる。上記の結果から、地理的に見て、避難をしないという行動選択の確率を可視化することができ、そこから避難施設の最適配置のあり方を総合的に検討した。
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