研究課題/領域番号 |
15H04104
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
佐藤 滋 早稲田大学, 総合研究機構, 上級研究員 (60139516)
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研究分担者 |
久保 勝裕 北海道科学大学, 工学部, 教授 (90329136)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 城下町都市 / 北海道植民都市 / 構成原理 / 山当て / 山岳信仰 / 水システム / 地理情報システム / 自然景観 |
研究実績の概要 |
本研究は、GPSやGISを用いた精密な計測に基づき、周辺の自然・地形と応答する環境共生を基本とした伝統的都市デザイン手法を、以下の5点について研究を進め成果を得た。第一に、近代の都市空間整備歴調査に基づく経年的復元図の作成である。地籍図をGIS の座標上に重ね、拡幅及び道路線形変更以前の街路形状を復元した。 第二に、城下町都市における自然地形と応答した都市デザイン・環境共生手法の解明である。上述の分析方法、復元図を用い、城下町を対象に山当ての実態解析を行った。村上では、立地条件に応じて異なる景観が配置されていること、鶴岡では、水系構造との関係で、信仰対象の山岳に対する借景的な景観が分布していること、盛岡、八戸では、信仰対象の山岳や磐座との関係で、見通し街路や主要施設が配置されていることが明らかとなった。これらを、鶴岡、盛岡において動画映像として編集、記録した。 第三に、北海道殖民都市における、自然地形と応答した都市デザイン・環境共生手法の解明である。例えば、山当てによって基線が設定された羊蹄山周辺地域では、その後の開拓道路や鉄道軌道の建設時に、当初のグリッドから逸脱しながらも山容の優れた山への軸線が計画され、段階的に現在の景観が形成されたことを明らかにした。これらを、動画映像として編集、記録した。 第四に、伝統的都市デザインとその変容に関するデータベースの作成である。主要な23都市を対象に、江戸期の山当ての分布と、現代の景観施策における周辺山岳への眺望保全の実態をGIS上に描画した。 第五に、現代のまちづくり・都市デザインにおける伝統的環境共生手法の展開の検証である。城下町55自治体の景観・都市計画担当者に対し、山当てに対する認識と、保全手法に関するアンケートを実施した結果の分析を通して、山当て眺望の保全が、一部の都市で現代の都市設計・計画に継承されている実態が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分析方法の整理と復元図の作成が進んだことで、GISを用いた網羅的な調査が可能となり、都市デザイン手法の解析やデータベースの作成が順調に進んだ。 研究計画で想定した調査、分析が進んでおり、城下町都市の構成原理に関する解明が進んでおり全体として概ね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果をもとに、下記4点について、城下町都市を重点に、北海道植民都市を比較対象として、研究を推進する。 第一に、自然地形と応答した都市デザイン・環境共生手法の把握について、対象都市を広げ、排水、利水、治水・洪水対策など水環境マネジメントの実態と、城下町の都市構成や山当ての分布との関係を分析する。 第二に特に、柳川、佐賀、萩などを重点的な研究対象として,周辺地域における伝統的な水管理方法が城下町の水システムと明確な一体性を持って,構成原理を規定しているとの仮説の元で分析を進める。 第三に、伝統的都市デザインとその変容に関するデータベースの作成に関して、江戸末期の石高が50万石以上の主要な城下町を含めたデータベースを完成させる。また、今日視認可能な周辺山岳への山当て景観を抽出して、それらを対象とした「映像データベース」の構築を行う。 第四に,北海道植民都市においても上記と同様な分析を進め、その同質性と差異について明らかにする。
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