研究課題/領域番号 |
15H04106
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
中江 研 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40324933)
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研究分担者 |
池上 重康 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30232169)
角 哲 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90455105)
木方 十根 鹿児島大学, 理工学域工学系, 教授 (50273280)
小山 雄資 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (80529826)
崎山 俊雄 秋田県立大学, システム科学技術学部, 准教授 (50381330)
砂本 文彦 広島国際大学, 工学部, 准教授 (70299379)
中野 茂夫 島根大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (00396607)
平井 直樹 清水建設株式会社技術研究所, その他部局等, 研究員 (50724481)
山本 一貴 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (90533977)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 田園都市 / 工業都市 / 社宅街 / 同潤会 / 日光電気精銅所 |
研究実績の概要 |
初年度は主に文献調査を進めた。田園都市について,国内大学所蔵の関連洋書の取得状況を調査し,法学・経済・経営及び農学分野での取得が先行していることが把握された。従来,内務省地方局有志編纂『田園都市』(1907年)の刊行を機に田園都市への関心が広まったと指摘されている。しかし,同時期に内務省とは別に工場法制定に関連して関心を示す研究者の存在も本調査で把握された。 同潤会については,海外の住宅地設計手法の日本への導入を探るために,同潤会が刊行した『外国に於ける住宅敷地割類例集』(1936年,岸田日出刀, 高山英華共同研究,内田祥三校閲),『同 続集』(1938年,高山英華編)に掲載された海外住宅地に用いられている設計手法について,その街区組成の分析・考察を行った。このうち大半を独,英,米の3箇国が占めており,これらの国の住宅地が当時特に参照されていた可能性が高いと考えられる。またその特徴として,イギリスの事例では袋路や湾入道路を用いた街区が多く,アメリカは袋路も湾入道路も用いない街区のものが過半を占めること等が把握された。 一方,文献だけでなく,当時,海外に派遣された人々の直接の見聞の状況把握も必要であると考えられることから,明治・大正期の海外渡航者をまとめた文献から所属と渡航先を整理,分析し,企業からの派遣が19世紀末から増加する等マクロ的な動向を把握した。このうち,ボーンビル(英)等の欧米の産業都市視察を行った日光電気精銅所所長の鈴木恒三郎,欧米渡航後に同所の経営に関わり,のちに取締役となった長谷川鐡太郎に着目し,調査した。長谷川は『工場と職工』(1915年刊行)で,クルップ社(独),キャドバリー社(英)を事例に工場での施策を記述している。同所は当時「山間の田園都市」とも称されており,その社宅街の空間形成に英独の知見が生かされている点を考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
文献資料調査で把握すべき図書がかなり多く,時間を要しているが,これは研究計画段階で想定されていたものである。一部,調査の進捗が遅れ気味のものがあるが,一方で当初は予定していなかった当時の海外派遣の状況把握調査が進展をみており,総じて順調に進展しているものと判断される。
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今後の研究の推進方策 |
すでに着手している住宅営団関係資料,三菱史料館所蔵資料をはじめ,文献調査・分析を今後も継続して進める。また海外での資料収集が必要な山田守著『ジードルンク』(1933年刊行)掲載の参考洋書文献については初年度にドイツ・ベルリン国立図書館,ベルリン工科大学図書館等で調査し,おおよそ半分の文献を収集した。山田が挙げた書名に誤記があることが判明したため,資料収集と並行して文献リストの修正作業を行っており,これも第2年度に継続的に調査を行う予定である。 また海外に派遣された人物についての広範な調査を継続するとともに,海外での知見を日本で生かしたと推測される人物については優先的に詳細な調査を行う予定である。
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