研究課題/領域番号 |
15H04109
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
青井 哲人 明治大学, 理工学部, 専任准教授 (20278857)
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研究分担者 |
高村 雅彦 法政大学, デザイン工学部, 教授 (80343614)
辻原 万規彦 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (40326492)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 台湾都市 / 濁水溪河系(流域) / 彰化平野 / 水害 / 都市移動 / 治水・利水 / 華南(福建)の都市 |
研究実績の概要 |
従来の台湾都市史研究では、清朝時代については中国都市モデルの周辺世界への波及、また日本植民地時代については都市行政の近代化と都市景観の西欧化の観点が強調され、この視角の限定性ゆえに大正と市郡にも偏りがあった。対して本研究では、華南地方を出自とする漢人社会の台湾への「移植」のみならず「土着化」の実態に着目し、河川流域における多様な都市類型の形成を包括的に捉える。また植民地期については「産業化」による都市基盤の解体・再編と漢人社会の適応に注目する視座から地域・都市構造の変容過程を捉える。また、以上の視座から導かれる新たな台湾都市史像を、華南ひいては中国都市一般の歴史と比較する。27年度の研究実績は以下のとおりである。 (1)本研究の初年度にあたる平成27年度は、研究ユニット1(青井:19世紀までの地域・都市形成)および研究ユニット2(辻原:20世紀前半の産業化)の共同調査を、製糖工場の立地による都市形成に特徴のある溪州を対象として行った。これにより各ユニットの過去の研究成果および方法論の蓄積の共有を通して、溪州という産業都市の形成過程にインフラ建設と産業資本の強力な関与といった点で、台湾の他の伝統的な商業都市とは相当に異なる都市形成の論理を把握することができた。 (2)研究ユニット3(高村・恩田:華南・中国との比較)は、廈門など福建南部の都市において臨地調査を行うとともに、台湾都市との比較にかかわる文献調査、文書調査を進め、28年度に実施予定のユニット1・3の共同調査につながる研究基盤を整えることができた。 (3)28年2月には、全ユニット・メンバーが集まり、27年度研究成果報告会を実施した。とりわけユニット1・2間の情報交換・討議を経て、濁水溪流域という圏域の植民地期の変容を捉える枠組みに実質的な基盤を与えることができたのが大きな成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では、研究ユニット1(青井:19世紀までの地域・都市形成)および2(辻原:20世紀前半の産業化)は、平成27-28年度の2年間にわたり、西螺・二水・竹山を対象とする共同臨地調査を行うこととしていた。しかし、27年度は、夏期調査に先立つ研究打合せでの討議を踏まえ、ユニット2の主題を展開するうえでより効果の高いと判断された溪州を対象都市とすることに変更した。これが研究の進展・深化を期すうえできわめて高い効果をもたらした。植民地産業化に伴う地域構造の変化および都市形成の論理が共同研究の成果としてよく把握できただけでなく、ユニット1・3相互に方法論上の拡張が得られたからである。 以上のような変更は、本研究全体の目的およびその枠組・方法論自体を変更するものではなく、5年間の研究計画のうち、具体的な研究項目の着手順を変更するものであり、また、研究ユニット間の問題意識の共有、知見や方法論の蓄積の共有を通じて、研究枠組の実質的な整備をより効果的に、より迅速に進めるためのものである。したがって当初計画どおりの進捗ではないが、当初計画を改善するものであり、進捗は順調であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」に記したとおり、当初計画を修正しての27年度の調査研究の実施によって、研究ユニット間の知見・方法論の共有を、具体的な対象フィールドにおける共同臨地調査を通して早期に効果的に進めることが研究進捗のためにきわめて有効であることが分かった。このことを踏まえ、28年度も当初計画を変更し、ユニット1と3(高村・恩田:華南・中国との比較)の共同臨地調査を、建街文書の比較的よく残る都市(永靖)を対象として実施し、土地の取得・分配をはじめとする建街方式に関する華南・台湾間の比較の第一歩とすることにした。 また28年度はこうした作業を通じて、当初の研究枠組みをより具体的な水準において書き直し、残る3年間の研究をより実り多きものにするための、研究枠組みの再構築をひとつの目標としたい。
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