研究課題/領域番号 |
15H04109
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
青井 哲人 明治大学, 理工学部, 専任教授 (20278857)
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研究分担者 |
辻原 万規彦 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (40326492)
高村 雅彦 法政大学, デザイン工学部, 教授 (80343614)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 台湾 / 濁水渓流域(河系) / 領域史・都市史 / 災害(洪水、河川氾濫) / 漢人入植 / 河川流通 / 植民地産業化 / 福建・広東地方 |
研究実績の概要 |
本研究では、台湾西部の濁水渓流域を人文地理的な研究枠組とし、福建・広東両省からの移民集団の地域への展開と土着化および植民地産業化のインパクトを、地域・都市の類型的・関係的構造の動態から捉えることを試みている。平成30年度の研究実績は以下のとおりである。(1)研究ユニット1(19世紀-20世紀初期の地域・都市史研究)は、30年8月に濁水渓流域の扇頂部に立地する竹山地域の臨地調査を行った。竹山市街そのものは河川流通には関与せず、かわりに濁水渓・清水渓沿岸部に「寮」と呼ばれる小規模な流通基地が複数つくられていたことが分かった。18世紀に加速する竹山地域への漢人入植はショウ州系が圧倒しており、18世紀から19世紀初期に泉州系が平野部での流通権益を確立していく歴史過程に鑑みると、これに伴う泉州系商人資本の上流部への進出が想定される。沿岸拠点のひとつ社寮はその例証として重要である。なお、台地上の竹山市街には1886年に雲林県治が置かれ、山地の撫墾政策の拠点となり、その延長上に植民地期の市街変容を跡づけることができた。(2)研究ユニット2(20世紀前半の糖業開発と地域変容)は、31年3月に台湾の中央研究院等で文献調査と研究打合せを行ったほか、台湾日日新報掲載記事数万件の整理作業を進め、糖業開発に伴う農地、工場、鉄道、道路、用水路等の整備と、既存市街地・集落との関係、これら空間編成の過程について網羅的な可視化作業を継続している。(3)研究ユニット3(福建南部諸都市と台湾都市の比較)は、30年11月および31年1-2月に福建省泉州市内各地の村落調査を行った。それら村落の拡張・改造の過程の復元的解明と、台湾の集落・都市のそれとの比較を試みている。(4)研究ユニット1-3の成果共有のため、2019年2月に明治大学生田キャンパスにて研究会を開催し、31年度の研究計画についても打合せを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
毎年、研究ユニット1-3の担当者が集まって開催する成果共有・研究打合せのための研究会がうまく機能している。また、とくにユニット1と2では例年コンスタントに成果発表を行うこととしているのも有効であると考えられる。研究ユニット3はやや遅れているが、これは中国の無名の都市・集落の研究蓄積が浅く、調査ターゲットの絞り込みに時間を要したためであるが、30年度に成果の発表ができる段階に至った。
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今後の研究の推進方策 |
研究ユニット3の研究がやや遅れているが、調査ターゲットの絞り込みができ、初期調査の成果発表も行うことができたので、最終年度でのキャッチアップに支障はないと判断している。研究全体としては、31年度には研究グループ内での研究会に加え、台北の中央研究院にて関連諸分野の研究者を招いてワークショップの開催を計画している。これにより30年度までの調査研究の視座・方法・成果について台湾の専門家による批評的コメントを受け、研究成果のまとめに向けて、研究水準と本研究の独自性を確認するとともに、検証・再検討・補足を要する点を把握して有意義な成果をまとめられるようにしたい。
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