研究課題/領域番号 |
15H04113
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
須藤 祐司 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80375196)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 不揮発性メモリ / 電極材料 / 相変化メモリ / アモルファス / 結晶化 |
研究実績の概要 |
本研究では、データ保持性に優れる高結晶化温度を持つ新規相変化材料(PCM)であるGeCu2Te3(GCT)を用い、PCM/電極のRcの定量的評価およびその電極材料依存性を決定する因子を解明する事を目的とし、本期間において以下の知見を得た。 (1) GCT/W電極間の相変化に伴う接触界面抵抗率ρc:本研究では、Circular Transfer Length Method(CTLM)パターンを作製し、GCT/W電極のρcを測定した。GCT/W電極のρcはGCTの抵抗率と同様に、結晶化温度で急峻な減少を示し、四桁程度低下する事が分かった。光電子分光測定の結果から、アモルファスGCTにおいては、フェルミレベルにおける状態密度は殆ど見られず半導体的性質を持つ一方、GCTのフェルミレベルにおける状態密度は結晶化に伴い増加し、結晶相GCTは金属的な性質を示す事が分かった。この事から、相変化に伴う四桁程度のρc変化は、GCTの電子物性が半導体的なアモルファス相から金属的な結晶相へ変化したことに起因する事が分かった。また、結晶化に伴うGCT/W電極のρcの変化は、既存材料であるGe2Sb2Te5(GST)/W電極に対して約四倍大きい事が分かった。 (2) PCM/電極界面の電子状態:Spring-8のビームラインBL47を用い、GCT/金属電極界面の電子状態を硬X線光電子分光(HX-PES)により評価した。その結果、アモルファスGCTでは、電極直下においてバンドベンディングが生じ、そのバンドベンディングの大きさは、金属電極の電子親和力に依存する事が分かった。また、金属電極によっては界面反応が生じ、化合物が形成している事が示唆された。 (3) メモリ動作性:GCTおよびW電極を用いたメモリセルを作製し、その動作性を評価した。微細セルでは、SET(結晶相)およびRESET(アモルファス相)状態の電気抵抗差は、それぞれの接触界面抵抗の差に起因し、三桁以上の電気抵抗差が得られる事が分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究により、W電極と相変化材料間の接触界面抵抗率および相変化に伴う接触界面抵抗率変化について定量的に評価を行うと共に、相変化材料/電極界面の電子状態評価より、相変化材料の界面近傍のバンドベンディングに及ぼす金属電極依存性についても実験を行った。それら知見から、特に、新規GCT化合物は、既存材料であるGe2Sb2Te5(GST)に比して、相変化に伴う接触界面抵抗の変化は約四倍程度大きい事が分かった。メモリセルの微細化に伴い、メモリセルの全抵抗は接触界面抵抗に支配されることになる。即ち、GCTメモリセルはGSTよりも、熱的安定性が優れているだけでなく、データ読み取りの信頼性(アモルファス相と結晶相状態の電気抵抗差が大きい)が高いということが分かってきた。 以上のように、既存材料および新規材料について、相変化材料/電極間の接触界面抵抗率およびその相変化に伴う変化について定量的な成果が得られており、当初の計画通りに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、接触界面抵抗率および相変化に伴う接触界面抵抗率変化に及ぼす電極依存性を定量的に評価し、電極界面近傍における相変化材料の電子状態との関係を定量的に明らかにする予定である。また、メモリ動作について更なる検証を行い、書き換え信頼性、耐久性に及ぼす電極材料依存性についても定量的に評価を行う。また、次世代の微細メモリセルでは、隣接するセルへの熱擾乱の影響が懸念されている。それ故、GCTといった耐熱性に優れる相変化材料の熱擾乱耐性やそれら熱擾乱耐性に及ぼす電極材料の依存性について評価を検討する。更に、GCTのみならず他の新規高耐熱性相変化材料についても、その接触界面抵抗率について評価を行う。
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