本研究では、データ保持性に優れる高結晶化温度を持つ相変化材料(PCM)を開発すると共に、将来の微細相変化メモリ(PCRAM)セルの動作性能を左右するPCM/電極間の接触界面抵抗率ρcの定量的評価および電極材料依存性を決定する因子を解明する事を目的とし、本期間において以下の知見を得た。 1.CGTを用いた単純なメモリセルを構築し(上下電極:タングステン)、そのメモリ性能を評価した。リセット時とセット字のメモリセル抵抗比は、約8×103程度であったが、この抵抗比は、CTLM法にて測定したCGTアモルファス/W間およびCGT結晶/W間のコンタクト抵抗比の8×103と一致し、メモリセル抵抗比はコンタクト抵抗比に支配される。また、その書換え耐久性は105回数程であった。 2.CGTアモルファス/Wコンタクトは整流性を示し、ショットキー伝導を示す事が分かった。この事は、CGT材料においては、相変化材料と電極間の界面伝導メカニズムが極めて重要である事を示唆する。 3.Cr-Ge-Te三元化合物(CrGT)については、従来のPCMとは逆に、結晶の方がアモルファスよりも電気抵抗が高いといった特異な物性変化を示す事を見出してきたが、そのアモルファス相と結晶相の電気抵抗率比は一桁程度と小さい。しかし、CrGT/Wコンタクトにおいては、アモルファス相と結晶相で二桁以上の抵抗差が得られる事が分かった。これは、CGTと同様に、微細メモリセルでは、相変化材料/電極界面がその伝導を支配する事に起因する。また、CrGTメモリセルでは、既存GSTに比較して、85%程度の動作エネルギー削減が可能である事が分かった。この低動作電力は、CrGTの高い結晶相電気抵抗とメモリセルの界面伝導支配によって実現されることを電流のパーコレーションモデルの観点から明らかにした。
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