研究課題/領域番号 |
15H04116
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
世古 敦人 京都大学, 工学研究科, 准教授 (10452319)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 第一原理計算 / 機械学習 / 回帰分析 / 分子動力学 / 原子間ポテンシャル |
研究実績の概要 |
本研究で提案する高精度原子間ポテンシャルは,多数の第一原理計算結果をもとに,多種多様な基底関数により結晶構造を表現した上で,LASSO回帰によりエネルギーと基底関数の関係を推定するものである.この原子間ポテンシャル構築技術の確立を目指し,本研究では以下の3つを実施する.①結晶構造表現のための基底関数を考察,および基底関数算出のためのプログラム開発を行う.②エネルギーと基底関数の関係を表す線形モデルの一般化を行い,二種類以上の元素を含む化合物に適用可能な線形モデルを導入する.同時に,線形モデルの一般化に対応したプログラムの開発を行う.③導入した基底関数や線形モデル,開発したプログラムを用いて,具体的な材料への適用を行う. 平成28年度は,31種の単体金属において,多数の結晶構造について第一原理計算を実行し,ポテンシャル構築を行った.これら31種類の単体に対して,原子間距離のみから導出される結晶構造記述子およびそのべき乗,交差項を用い,線形回帰ポテンシャルを構築した.その結果,単純金属においては,非常に高精度な原子間ポテンシャルを構築することができたが,遷移金属においては,精度が不十分であった.さらに,回転に対する不変量である角度依存記述子を導入し,その精度について検討を行った.その結果,遷移金属については,角度依存の記述子を考慮することにより,エネルギーの予測精度だけではなく,原子に働く力が大幅に向上することが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究を進めていく上で,原子間ポテンシャルのとの関係を導き出すと同時に,それを用いることにより想定していた以上の精度を持つ原子間ポテンシャル構築手法を開発することができた.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度,28年度に引き続きポテンシャル構築を行う.特に合金やイオン性化合物への適用を行う. 合金やイオン性化合物,不定比性化合物への適用を行う.それと同時に,適用する物質固有の問題に応じて,基底関数の導入や線形モデルの拡張,プログラム開発を行う.これらの物質においては,単元素物質と比べて相互作用が複雑になるため,原子間ポテンシャル構築が難しくなると想定される.また,必要となる第一原理計算のモデル構造数も大幅に増加すると考えられる.これらの複雑な系への適用を通して,本研究による方法の有効性や汎用性を実証する. ・結晶構造表現のための基底関数の考察およびプログラム開発:前年度に引き続き,基底関数の考察を行う. ・イオン性化合物への適用:単純なイオン性化合物においては,長距離の静電相互作用を含めて計算する必要があるため,静電相互作用を取り入れた枠組みを構築する.最初の研究対象としては,単純なMgO,Al2O3,ZrO2などの化合物を考えている.さらに,MgAl2O4やSrTiO3のような3種類以上の元素を含む複合イオン性化合物において,原子間ポテンシャルの構築を行い,多元系に対する予測精度や移植性について検討する.複合イオン性化合物では,長距離の静電相互作用の計算が必要なことに加え,単純イオン性化合物に比べて結晶構造が複雑であるため,原子間ポテンシャル構築が難しいと予想される. ・不定比性化合物への適用:さらに,不定比性化合物を対象とした原子間ポテンシャル構築を行う.このような系では,静電相互作用に加え,組成や局所環境により原子の価数が変化することを考慮した原子間ポテンシャル構築を行う必要がある.このような複雑な系への応用を通して,原子間ポテンシャル構築技術を発展させる.研究対象としては,不定比性化合物として知られているSnO2-xやTiO2-xなどを考えている.
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