研究実績の概要 |
最終年度である今年度は、これまでの成果を元にさらなる研究の推進を進め、主に以下の成果を得た。 (1)耐熱鋼の高温クリープ特性を制御する多元系炭化物γ-M23C6(M=Cr,Fe)について、その相安定性を部分占有モデルの新規導入により解析した。第一原理計算と統計力学的手法を用いて相安定性の温度依存性を解析し、従来型モデルではこれまで見つけることができなかった相を新たに見つけることができた。さらに、この結晶相が安定して存在する理由を探るため、原子が複数個集まったクラスターの電子状態を単位として捉える「スーパーイオンモルフォロジー」のアイデアを導入した。その結果、従来はメカニズムの理解が困難であったのに対して、特定の元素がクラスター上の特定の格子を優先的に占有することで各クラスターが安定性を保ち、さらにそのクラスター単位で互いに正負の電荷を持つことで炭化物の安定性が決まるというメカニズムを明らかにした。本研究についてはプレスリリースを行った。 (2) 第一原理分子動力学(MD)シミュレーションにより、実用温度領域(~973K)におけるチタン表面酸化機構の初期メカニズムの理論解明をおこなった。さらに本機構に対する添加元素(Si等)の効果を明らかにした。その際、温度の効果を調べるためカノニカルアンサンブル(NVT一定)のMDを導入することで、温度依存性を定量的に明らかにできた。 (3) チタン合金の相安定性の添加元素種とその濃度依存性を系統的に明らかにした。HCP相とBCC相について、原子のランダム原子配置を考慮したスーパーセルを導入し、相安定性と弾性特性を評価した。また電子状態解析によりその安定性について議論をおこなった。 (4)Mg系合金について、粒界の合金元素偏析による強化機構を理論的に明らかにした。これは強加工変形実験に対応する理論研究である。
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