研究課題/領域番号 |
15H04118
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
木口 賢紀 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (70311660)
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研究分担者 |
山田 智明 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (80509349)
嶋田 雄介 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (20756572)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | リラクサー / 組成相境界 / 弾性場 / 相安定性 / 分極回転 / 結合状態 / 歪み誘起相転移 / 電子顕微鏡 |
研究実績の概要 |
初年度に作製したPMN-xPT (x=0-100)固溶体エピタキシャル薄膜を堆積し、以下の知見が得られた。 1. 菱面体晶相単相であるPMN-xPT(x=0-40)について、原子分解能高角度環状暗視野走査透過型電子顕微鏡(HAADF-STEM)像の幾何学的位相解析により算出した歪みマップを解析した結果、薄膜界面近傍に薄膜内部とは異なる歪み状態にある領域が存在することを見出した。この歪み場はマクロな格子ミスマッチや熱膨張係数差では説明ができなかったが、薄膜基板界面に周期的に存在するミスフィット転位心近傍に局在化した歪み場が相互に干渉し,菱面体晶相から正方晶相へ向かって自発分極回転することで正方晶相の核生成サイトそして機能することが明らかになった。このメカニズムによって、PMN-xPT(x=50-80)の2相共存組成において薄膜基板界面から正方晶相の核生成・成長が起こることが説明できる。また、この歪んだ界面領域では、非対称な歪み勾配が形成されていることから、界面フレキソエレクトリック効果の発現にも関与しており、今後本研究を展開する1つの方向性を示唆している。 2. PT60-80mol%の組成域において菱面体晶相と正方晶相の2相共存、つまり組成相境界(MPB)における菱面体晶相から正方晶相への相変態過程を表す相境界構造を原子分解能で明らかにした。また、電子エネルギー損失分光(STEM-EELS)法によって両相の結合状態の変化を解析し、菱面体晶相から正方晶相への相転移に伴ってPb-O間の軌道の混成状態が変化しており、軸比や強誘電性の変化を示している。 以上のように、PMN-xPT固溶体エピタキシャル薄膜におけるMPB組成のシフト現象は薄膜基板界面におけるミスフィット転位に起因する弾性場による結合状態変化が重要な要因になっていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、2相共存組織形成の主要な起源が、薄膜基板界面における局所弾性場にあること、その弾性場はミスフィット転位芯の弾性場によってもたらされることにあることを突き止めた。また、この様な局所的な弾性場が菱面体晶相から正方晶相への歪み誘起相転移を引き起こすことにより歪み界面層が正方晶相の核生成サイトとして機能すること,そして化学結合性の変化による強誘電性の変化をもたらすことが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、界面の弾性場を変調することにより意図的に歪み状態を変調することでこの2相共存組織そしてMPB組成がどのように変調されるのか、局所構造、電子状態及び誘電特性の観点から多面的にMPB形成のダイナミクスの究明を目指す。 具体的には以下の4項目を重点的に調べる。 1.局所弾性場がPMN-PT薄膜の結晶構造や相安定性に及ぼす効果 2.超薄膜化や積層化が局所弾性場を介して相安定性に及ぼす効果 3.相転移・ドメイン構造形成のダイナミクス 4.歪んだ界面領域における非対称な歪み勾配が界面フレキソエレクトリック効果の発現に及ぼす効果
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