研究課題/領域番号 |
15H04122
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
松下 伸広 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (90229469)
|
研究分担者 |
我田 元 信州大学, 工学部, 助教 (40633722)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 溶液作製 / 酸化亜鉛膜 / 透明導電性 / パターニング |
研究実績の概要 |
平成27年度は、どの紫外波長領域が溶液作製したZnO膜の抵抗率を減少させるのに適当であるかを調べるために紫外線ランプとバンドパスフィルターを組み合わせた紫外線照射実験を行った。スピンスプレー法で30分間堆積したZnO薄膜は厚さ約 1 µmであった。UV-VIS測定の結果、可視光領域(λ=400~800 nm)において透過率80%以上という透明導電膜として十分高い透過率を有しているが抵抗率は10 Ω・cm以上と高抵抗であること、FT-IRにより堆積後の膜中にはクエン酸由来と考えられるカルボキシル基が存在し、これらが紫外線照射後には消失するとともに、膜の導電性が3桁程度低下することを確認した。 スピンスプレー法で堆積後のZnO膜に、バンドパスフィルタを用いて特定波長λが①340 nm, ②365 nm, ③370 nm, ④380 nmの紫外線(バンド幅約10 nm)を照射し、1→3→9→24時間経過後の抵抗率を測定した。それぞれ抵抗率は①0.10→0.08→0.06→0.06 Ω・cm、②0.25→0.22→0.21→0.20Ω・cm、③0.39→0.29→0.21→0.19 Ω・cm、④0.61→0.33→0.23→0.20 Ω・cmといずれも時間経過とともに減少することを確認した。 波長λが340 nmのときに最短の時間で且つ最も低い抵抗率に到達するものの、同波長のレーザは高額であることから、十分に低抵抗化が図れて比較的安価な波長λ=365 nmのLEDレーザを導入した。このレーザ(1000mA入力)をX-Yステージ上に設置して、10回繰り返し照射したところ、抵抗が632kΩから2桁程度低下できること、レーザ照射領域のみが低下することを確認し、導電性2次元パターニングの可能性を見いだした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バンドパスフィルターにより、複数の特性波長の紫外線照射によって抵抗率を低下させる実験により得られた結果を元に、波長を選定した紫外レーザの導入を行った。同レーザをX-Yステージに固定したシステムを構築し、透明導電領域の2次元パターニングに成功した。また、X線回折装置(XRD)、ラマン分光、ホール測定による結晶性や電導特性の評価に加えて、XPSによる表面組成の測定やFT-IRによる膜内部に存在するクエン酸由来のカルボキシル基の消滅過程の調査も行った。さらには、プローブ顕微鏡により、膜の深さ方向の導電性領域制御に関する実験も始められたことから、ほぼ当初予定していた通りに進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
27年度に導入したLEDレーザとX-Yステージにより、溶液作製したZnO膜中に導電性回路の2次元パターニングを行い、それをプローブ顕微鏡により測定するとともに、深さ方向の導電性領域確保についても条件探索を進める。また、p型Si基板やp型GaN基板上に透明ZnO膜を堆積し、紫外線照射後に導電性が得られる様な亜鉛イオン濃度、アンモニア濃度、クエン酸濃度、基板温度等の条件を明らかにする。これらp型基板上についても2次元パターニングを行う。
|