研究課題/領域番号 |
15H04124
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
大幸 裕介 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70514404)
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研究分担者 |
早川 知克 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00293746)
吉田 智 滋賀県立大学, 工学部, 准教授 (20275168)
武藤 浩行 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20293756)
村井 俊介 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20378805)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | プロトン注入 / プロトン伝導性ガラス / クリープ / 圧子圧入 / 燃料電池 |
研究実績の概要 |
我々の研究グループは混合アルカリ組成のリンケイ酸塩ガラスは、溶融直後はOH基がほとんど観測されないにも関わらず水素雰囲気下でプロトン輸率tH = 1を発現することを見出した。さらに独自改良したFT-IR測定から、燃料電池雰囲気下(水素雰囲気、通電条件)においてプロトン濃度が増加することを発見した。これより、水素ガスより電極反応によってガラス中にH+が注入され、そのプロトンがキャリアとして電気伝導を担っている可能性が示された。他方、シリカガラスにおいて、Si-O-Si結合の切断に伴い、機械的特性が変化することが報告されており、本ガラスでも同様に、プロトン導入に伴うP-O-P結合の切断がその機械的特性に影響を与えることが予想される。プロトン導入条件下で連続的に機械的特性を測定した例は無い。そこで本年度に圧子圧入試験機を改良してクリープ試験を行い、H+注入によるガラスの機械的特性変化について調べた。圧子自体を電極として利用することで、水素雰囲気通電下でH+注入が生じているまさにその条件下でのクリープ測定が可能となった。水素雰囲気では窒素中などと比較して明らかにクリープ変位が大きくなり、また緩和に窒素中と比べて2~3倍の長時間を要した。さらに1%程度の相対湿度においても緩和時間が大きく増大し、加湿によるH+注入量の増大とそれに伴うガラスの軟化が示唆された。またクリープ緩和時間とH+注入速度との関係について定性的な知見を得た。in-situ赤外分光装置も改良を重ね、圧子圧入試験と同一条件でのOH基の時間変化を捉えることが可能となり、次年度は両者の時定数の相違について詳しく解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度(初年度)はH+注入量と注入速度を定量化するためのin-situ FTIR装置およびH+注入条件でのガラスの機械的特性を評価するin-situ 圧子圧入装置のセットアップを主目的とした。これまで厳密に雰囲気(ガス、真空、相対湿度、電極への印加電圧)や温度を制御したFTIR測定はできていなかった。そこで本年度は上記条件を任意に制御して自動測定する赤外分光系を整備し、設計・納品から組み上げまで全て順調に終了した。水素雰囲気でPtなど活性電極に1 V程度の電圧を印加することでOH基濃度が時間と供に増大した。電極形状は有限要素法を用いて赤外線ビーム径との関係から最適と思われるものを設計した。 他方、球形圧子自体を電極に用いて白金リング電極の中心に圧入し、FTIRと同様に水素雰囲気中で電極間に通電することにより、H+注入条件での圧子圧入試験が可能となった。この独自装置によりH+注入条件でクリープ挙動が大きく変化することを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
ガラスの種類を系統的に変化させてH+注入速度と注入量の定量評価を行う。また加湿の効果も加味できるようになったことから、湿度変化させた際の注入量変化などを定量する。P=O二重結合とH+伝導性との関係を以前に報告しており、H+注入の生じやすいガラス構造について数式に基づき解析する。またクリープ緩和時間とH+注入速度との関係について、同じく数値解析して時定数の相似を検証する。 共同研究者(光班)と協力してH+注入前後のガラスの光学特性変化についても今年度に調べる。H+は軽く効果は未知であるが屈折率変化やまた吸光係数変化に注目する。
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