平成29年度は、①フッ素化垂直配向多層カーボンナノチューブ(F-VAMWCNT)を脱フッ素化させ、少量のフッ素基が残存する脱フッ素化VAMWCNT(deF-VAMWCNT)を合成し、その電気二重層キャパシタ(EDLC)特性を調べること、②分極の異なる化学修飾基を持つVAMWCNT電極のEDLC特性を調べることを行った。 成果1:100 mV/sにおける比静電容量では、deF-VAMWCNTが11.0 F/g、as-grown VAMWCNTが6.5 F/gであり、deF -VAMWCNTはas-grownと比較して約1.7倍の値を示すものの、掃引速度の上昇に伴い、10000 mV/s では約1.0 F/gまで減少した。これは、脱フッ素化により、チューブ骨格に欠陥が生じるため、チューブの抵抗が増大し、高速掃引時におけるオーム損が大きくなったと考えられる。 成果2:窒素置換型VAMWCNT(N-VAMWCNT)とdeF-VAMWCNTのそれぞれの電極について、Ag線を参照極とする3極式セルを用いた開回路電圧(OCP)はN-VAMWCNT < deF-VAMWCNTであり、N-VAMWCNTを負極、deF-VAMWCNTを正極とした異種電極EDLCセルのOCPは+0.16 Vを示した。異種電極EDLCセルはこの初期電位差の発生により、N-VAMWCNTの単種電極EDLCセルと比較して、単位質量あたりに同量の電荷を与えた際の到達電圧が+2.75 Vまで達し、充電電圧が高くなった。本研究によって、化学修飾VAMWCNTが持つ自然電位の差が大きくなるように異種電極VAMWCNT EDLCセルを作製することで、単位電荷量あたりに発生する電圧の向上が見込めることから、EDLCのエネルギー密度の向上が期待できることが明らかとなった。
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