本研究は、エポキシポリマーアロイ(ポリマーブレンド)をマトリックス樹脂としたフィラー添加系複合材料において、フィラーをマトリックス樹脂中に自己組織的に配列させ、隣接フィラー接触界面を自己接着させる主導原理構築を目指している。複合材中のフィラー間距離を自発的に縮め連続化させるための具体的方法として、最終(H29)年度はH28年度に引き続き、エポキシ/熱可塑性樹脂が形成する共連続構造の相分離界面にフィラーを配列させる条件検討を行った。アルミナフィラー表面へのシランカップリング処理を検討したところ、ビニルトリエトキシシランあるいはビニルトリメトキシシラン処理において、エポキシ/芳香族アミン/ポリエーテルスルホンブレンド樹脂の相分離界面にアルミナフィラーを配列させることに成功した。但し、フィラー存在場所にはサイズの影響もあり、サブミクロン以下のアルミナフィラーにおいては界面配列が生じるが、ミクロンサイズの粒子はエポキシリッチ相内に選択的に留まることを見出した。エポキシポリマーアロイの相構造形成およびフィラー存在場所は、熱力学平衡論(界面自由エネルギーの最小化)が推進力と考えられるが、エポキシポリマーがネットワーク(架橋ゲル)を形成し相構造変化が凍結されるより早いタイミングにてフィラーが界面配列する速度論的条件を満たすことも必要であり、1粒子あたりでの移動度が高いサブミクロンサイズの粒子が優先的に界面配列したと考えている。今後、シランカップリング剤の官能基を利用した化学反応によりフィラー間接着が期待できる。
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