Al合金のろう付けでは,酸化皮膜除去度と再酸化防止のためのフッ化物フラックスが用いられている.しかしフラックスの残渣が,フィンの目詰まりや,最終製品の電子部品を故障させる問題がある.またフラックスの塗布および除去は,時間的・経済的にも不利である.そこで本研究では,Al合金のフラックスフリーろう付を開発するために,雰囲気酸素分圧の低減や組成改良について検討してきた.過年度までの結果から,雰囲気酸素分圧の低減や,組成改良により,フラックスを用いずとも,Al合金の良好なろう付性が得られることを明らかにした.また,これを密閉構造体のろう付に用いた場合には,構造体内外でろう付性が異なっていた.そこで本年度は,Al合金の構造体内部の容積や表面積を変えてろう付を行い,内外での接合性の違いの理由について検討した. アルミニウム合金の角パイプの上下を密閉するようにフラックスフリーろう付したところ,内部容積が小さい場合には,外部よりも内部フィレットが大きく形成された.これは,構造体内部の酸素が試料の酸化によって消費されると,溶融ろうの表面張力が外部より大きくなり,表面張力差によってろうが内部へと引っ張られるためと考えられた.ただし内部容積を大きくすると,潜在的に存在する酸素量が増え,表面酸化による酸素分圧低下の効果が小さくなるため,内部フィレットは徐々に小さくなり,逆に外部フィレットが大きくなることが分かった.さらに内部容積がある値を超え,内外での溶融ろうの表面張力差がなくなると,十分量のろうが供給される外部フィレットの方が大きくなることが分かった.
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